仮名遣奥山路(読み)カナヅカイオクノヤマジ

デジタル大辞泉 「仮名遣奥山路」の意味・読み・例文・類語

かなづかいおくのやまじ〔かなづかひおくのやまぢ〕【仮名遣奥山路】

江戸後期の語学書。3巻。石塚竜麿いしづかたつまろ著。寛政10年(1798)ごろ成立万葉仮名用法を整理し、上代ではエ・キ・ケ・コ・ソ・ト・ヌ・ヒ・ヘ・ミ・メ・ヨ・ロの13(古事記ではチ・モを加える)の仮名が、2類に書き分けられていた事実を発見したもの。古代日本語の音韻組織を研究した先駆とされる。かなづかいおくのやまみち。

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精選版 日本国語大辞典 「仮名遣奥山路」の意味・読み・例文・類語

かなづかいおくのやまみちかなづかひ‥【仮名遣奥山路】

  1. 江戸後期の語学書。三巻。石塚龍麿著。寛政一〇年(一七九八)以前の成立。本居宣長の研究に基づき、記紀万葉に見えるエ・キ・ケ・コ・ソ・ト・ヌ・ヒ・ヘ・ミ・メ・ヨ・ロの一三(古事記ではチ・モを加えた一五)の音が、万葉仮名において各二種類に書き分けられていることを示したもの(ただし、チには二種類の別はなく、ヌ・ノについては、ノ二種類、ヌ一種類とすべきものである)。古代日本語の音韻組織の研究の先駆。かなづかいおくのやまじ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「仮名遣奥山路」の意味・わかりやすい解説

仮名遣奥山路
かなづかいおくのやまじ

石塚龍麿著。3巻。寛政 10 (1798) 年以前の成立。長く写本のまま伝わり,1929年に初めて刊行。本居宣長の『古事記伝』におけるかなの用法の研究を受け,古 (事記) ・ (日本書) 紀・万 (葉集) などの上代文献の万葉がなに,後世のイロハがなでは区別されていない使い分けがみられることを説いた本。五十音順に万葉がなを列挙してその通用範囲を示し,通用範囲が2類に分れるものを中心に具体的な所属語例をあげている。「エキ (ギ) ケコ (ゴ) ソチ (古事記のみ) ト (ド) ヌヒ (ビ) ヘ (ベ) ミメモ (古事記のみ) ヨロ」に2類を認めている。のちに上代特殊仮名遣の名で呼ばれることになる事実の発見である。長い間真価が認められずにいたが,橋本進吉により評価・紹介され,また修正を受けた。修正のおもな点は,ゲ・ゾにも両類を認めたこと,チの2類の区別を否定したこと,ヌの2類をノの2類としたこと,そしてこれらの両類の別が当時の発音の差に基づくものであることを明らかにしたことである。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「仮名遣奥山路」の意味・わかりやすい解説

仮名遣奥山路
かなづかいおくのやまみち

国語学書。3巻。石塚龍麿(たつまろ)著。1799年(寛政11)以前に成立したが、未刊のまま伝わり、1929年(昭和4)に刊行された。本居宣長(もとおりのりなが)の『古事記伝』総論の記述に示唆されて、記紀万葉などの上代文献を精査し、エ、キ、ケ、コ、ソ、ト、ヌ、ヒ、ヘ、ミ、メ、ヨ、ロ(『古事記』ではチ、モも含む)の各音節が、万葉仮名によって2群に書き分けられ、混用されていないことを明らかにした。これは上代特殊仮名遣いの甲類、乙類の区別に相当する。龍麿はこの区別を「仮名遣い」の問題ととらえ、国語音韻上の区別とは考えていなかったらしい。1917年(大正6)橋本進吉によって世に紹介され、上代特殊仮名遣い研究の濫觴(らんしょう)として脚光を浴びた。

[沖森卓也]

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