日本大百科全書(ニッポニカ) 「保険仲立人」の意味・わかりやすい解説
保険仲立人
ほけんなかだちにん
insurance broker
一般の保険代理店が保険会社の代理としてその保険会社の商品を勧めるのに対し、保険会社から独立した中立的立場で複数の保険会社と交渉し、顧客のための保険を選択・仲介する人。保険ブローカーともいう。欧米では保険ブローカーが保険を紹介するのが主流である。日本では、1971年(昭和46)に大蔵省(現、財務省)が損害保険業界に保険ブローカー制度の導入を要請し、1981年には当時の保険審議会が保険仲介制度の必要性を答申したが、いずれも保険業界の反対で実現しなかった。しかし、1986年のGATT(ガット)(関税および貿易に関する一般協定)のウルグアイ・ラウンドでサービス貿易に関する一般協定が成立し、保険制度改革の一環として日本も保険ブローカー制度を導入することが国際公約となった。欧米並みの保険ブローカー制度の導入で、保険販売ルートの多様化を進めると同時に、契約者の利便性を向上させる目的で、1996年(平成8)にようやく保険仲立人制度が導入された。
保険仲立人は、自己の知りうる保険商品のなかから、顧客にもっとも適していると考えられる商品を助言する法律上の誠実義務(ベストアドバイス義務)がある。このほか保険契約の見直し、適切な保険金額の算定、むだな保険の契約解除などを助言する。損害保険を扱う「損害保険仲立人資格」と、生命保険を扱う「生命保険仲立人資格」がある。資格を得るには、日本保険仲立人協会が実施する試験(損害保険仲立人試験、生命保険仲立人試験)に合格し、内閣総理大臣の登録を受けた後、保証金(手数料収入に応じて4000万~8億円)を供託し、財務局に届け出る。また裁判外紛争解決手続の専門機関である保険オンブズマンと手続実施基本契約を結び、入会金、保証金、負担金などを支払う必要がある。顧客に対し、手数料の開示義務もある。保険仲立人は保険代理店との兼営・兼業はできない。
保険仲立人資格の保有者は損害保険で1003人、生命保険で339人(2012)、法人で38社(2014)にとどまっている。資格保有者が増えないのは、多額の保証金供託義務が足かせになっていると指摘されており、金融庁は保証金額の引下げなどの規制緩和を検討している。
[編集部]