保食神(読み)ウケモチノカミ

デジタル大辞泉 「保食神」の意味・読み・例文・類語

うけもち‐の‐かみ【保食神】

日本神話で、五穀をつかさどる神。食物の神。

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精選版 日本国語大辞典 「保食神」の意味・読み・例文・類語

うけもち‐の‐かみ【保食神】

  1. 〘 名詞 〙 穀物の神。食物の神。田の神。うかのみたま。
    1. [初出の実例]「葦原中国(あしはらのなかつくに)に保食神有りと聞く。〈略〉〈保食神、此をば宇気母知能加微(ウケモチノカミ)と云ふ〉」(出典日本書紀(720)神代上)

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改訂新版 世界大百科事典 「保食神」の意味・わかりやすい解説

保食神 (うけもちのかみ)

ウケは食物,モチは〈保〉の文字によると〈持ち〉の意であるが,本来は〈貴(むち)〉の意か。《日本書紀》神代の条の神話では,天照大神(あまてらすおおかみ)の命(めい)により月読尊(つくよみのみこと)がウケモチノカミのもとに行くと,ウケモチが口から飯,魚,獣を出して供応したので,ツクヨミはその行為を汚いと怒り,剣を抜いてウケモチを殺し,アマテラスに報告した。すると,アマテラスは激怒してツクヨミとは二度と会うまいと言い,それで日と月とは一日一夜を隔てて住むのだと説明し,さらにウケモチの死体の各部分から,牛馬(頭),粟(額),蚕(眉),稗(ひえ)(目),稲(腹),麦・大豆(陰部)ができたという五穀の起源説話を載せる。これらの産物名と場所名とは朝鮮語で解けると言われる。《古事記》神話では大気津比売神(おおげつひめのかみ)が食物神として登場し,殺害者はスサノオノミコトとなっている。食物神の死は,秋の刈入れ(収穫)を表象している。
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朝日日本歴史人物事典 「保食神」の解説

保食神

『日本書紀』に登場する穀物神。「うけ」は食べ物,「もち」は「持ち」の意。高天原からきた月夜見尊(ツクヨミノミコト)を,口から種々の食物を吐き出して饗応したので,汚いことをするといって怒ったツクヨミに切り殺されたが,その死体の各部分には牛馬,繭,五穀が生じていた,と伝えられる。農耕の起源を語るこの神話には,ツクヨミが保食神を殺したと聞いた天照大神(アマテラスオオミカミ)が激怒してもうツクヨミとは会わないといったために,アマテラスとツクヨミつまり太陽と月とは別のときに空に現れることになったという日月の起源を語る話も含まれており,農耕と日月との密接な関係を示す。『古事記』にみえる類話では,月夜見,保食神に当たる神が須佐之男,大宜津比売とされ,話の内容も単純だが,その方が古いだろう。<参考文献>松村武雄『日本神話の研究』3巻,大林太良稲作の神話』

(佐佐木隆)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「保食神」の意味・わかりやすい解説

保食神
うけもちのかみ

日本神話のなかに出てくる食物をつかさどる女神。天照大神(あまてらすおおみかみ)が、月夜見尊(つくよみのみこと)に命じて保食神に食物を求めたところ、この神は口から飯や魚や動物を出して料理をし、さしあげた。すると月夜見尊が汚いと怒ってこの神を殺し、その頭からは牛馬、額から粟(あわ)、眉から蚕、目から稗(ひえ)、腹から稲、陰部から麦と大豆と小豆(あずき)が生まれた(『日本書紀』)。これはハイヌウェレ(死体化生(けしょう))型神話で、『古事記』では大気都比売神(おおげつひめのかみ)の話として伝承されているが、『古事記』の話に比べると一段と複雑になっている。

[守屋俊彦]

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百科事典マイペディア 「保食神」の意味・わかりやすい解説

保食神【うけもちのかみ】

食物の神。葦原中国(あしはらのなかつくに)に住む。月読尊(つくよみのみこと)を供応するため口から食物を出したので,おこった尊に殺されるが,その体から牛馬,五穀や蚕が生じた,という。
→関連項目大宜津比売神大御饌津神

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「保食神」の解説

保食神 うけもちのかみ

「日本書紀」にみえる神。
穀物をつかさどる。天照大神(あまてらすおおみかみ)の命でおとずれた月夜見尊(つくよみのみこと)を口から食物をだしてもてなし,きたないとおこった尊に殺される。のち死体の各部分から五穀,牛馬,蚕が生じたという。「古事記」では大宜都比売(おおげつひめの)神のところにおなじ話がある。

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世界大百科事典(旧版)内の保食神の言及

【倉稲魂】より

…食物(稲)の霊魂のこと。ウカはケ,ウケと同じく穀物・食物を意味しており,記紀の神話には,倉稲魂命(うかのみたまのみこと)はじめ大気津比売神(おおげつひめのかみ),保食神(うけもちのかみ),登由宇気神(とゆうけのかみ)等々共通する性格の神が多くあらわれている。ほとんど女神として語られるのは穀物をはぐくむのが女性としての大地だからであろう。…

【神話】より

…《古事記》によれば,素戔嗚(すさのお)尊によって殺害された大気津比売(おおげつひめ)神の身体の頭からは蚕が,両目からは稲が,両耳からはアワが,鼻からは小豆が,陰部からは麦が,尻からは大豆が発生し,神産巣日御祖(かみむすひのみおや)命がそれらを天上に取り寄せて,高天原で農業と養蚕を創始した。《日本書紀》では,これとまったく同類の話が,月読(つくよみ)尊に殺された保食(うけもち)神の身体のいろいろな場所から発生した五穀や蚕などが天上に運ばれ,天照(あまてらす)大神がそれによって農業と養蚕を創始したという形で物語られている。
[神話の伝播]
 この例からも知られるように,世界中の神話は,内容が前述したとおりきわめて多様であるのに,その反面,遠く離れた地域の神話のあいだにも非常にしばしば驚くほどの類似や一致が見いだされる。…

※「保食神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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