倉本(読み)くらもと

日本大百科全書(ニッポニカ) 「倉本」の意味・わかりやすい解説

倉本
くらもと

鎌倉室町時代荘園(しょうえん)年貢物を納める倉を管理・運営し、金融業をも営んだ業者。「蔵本」とも書く。荘園領主は、年貢物保管の倉庫を荘園内や輸送上に便利な港湾などに設置した。この倉庫の管理を委託された倉本は、年貢物などの売却をも手がけ、高利貸業をも営むようになった。荘園領主は、しばしば年貢物を引き当てとして借銭をしており、荘園領主経済にとって倉本は不可欠な役割を担っていた。戦国期の『政基公旅引付(まさもとこうたびひきつけ)』(九条政基)からは、荘園領主と「蔵本」との具体的な関係がうかがえる。また倉本には、初め荘園内の有力名主や荘官が、のちには都市商人が任命された。1334年(建武1)東寺(とうじ)領若狭(わかさ)国太良荘(たらのしょう)(福井県小浜市)では、寺家倉本の百姓角太夫(かくだゆう)宅に悪党が乱入し、年貢物や資材を奪っている。これは倉本が荘園内の有力百姓にゆだねられていた例である。

[鈴木敦子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「倉本」の意味・わかりやすい解説

倉本
くらもと

鎌倉,室町時代の金融業者。鎌倉時代には一般に借上 (かしあげ) といった。その多く寺院や富裕商人であったが,なかには有力荘官もいた。質屋を兼業し,質物を収める土塗りの倉庫を持ったので,倉本あるいは土倉 (どくら) と呼ばれた。最初は自分で倉を持つことのできない公家武家庶民から,その財産や貴重品を倉に預り,保管料を取っていたが,次第に積極的な金融を行うようになり,高利貸業者へと発展した。室町時代には,幕府に多額な倉役を納め,その保護を受けて栄えた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「倉本」の解説

倉本
くらもと

室町時代の金融業者
元来は荘園内の収穫物の倉庫の管理者で,多くは寺院や富裕な商人がたずさわった。したがって高利貸を営み土倉を経営する者もあり,鎌倉時代から南北朝時代にかけての借上 (かしあげ) の系列とみてよい。

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