健よか(読み)スクヨカ

デジタル大辞泉 「健よか」の意味・読み・例文・類語

すく‐よか【健よか】

[形動][文][ナリ]
すくすくと育つさま。丈夫であるさま。すこやか。「健よかに育つ」
心がしっかりしているさま。
「この内の御心いと―に」〈栄花・松の下枝
きまじめであるさま。律義。
「あの人がらも、いと―に、世の常ならぬ人にて」〈更級
そっけないさま。無愛想。
「―に言ひて、物ごはきさまし給へれば」〈若紫
固くごわごわしているさま。
「中紙の―なるに包みて」〈宇津保・蔵開下〉
衣服がきちんとして折り目正しいさま。
「御装束―に、いとうるはしくて」〈栄花・根合〉
険しいさま。
「―ならぬ山のけしき」〈帚木

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精選版 日本国語大辞典 「健よか」の意味・読み・例文・類語

すく‐よか【健よか】

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 「よか」は接尾語後世「すぐよか」とも )
  2. からだつきがしっかりしているさま。がっしりしているさま。
    1. [初出の実例]「女御の君、かきいだき奉りて見せ奉り給ふ。大宮見給へば、いと大きにて、首もすくよかなり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
  3. 健康であるさま。元気であるさま。しゃんとしているさま。
    1. [初出の実例]「昼は日一日、寝をのみ寝暮らし、夜はすくよかに起きゐて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)明石)
  4. ごつい感じであるさま。また、たけだけしいさま。
    1. [初出の実例]「いとすくよかなるゐ中侍めく物、太刀を抜きて走り寄るままに」(出典:増鏡(1368‐76頃)一三)
  5. 心が強くしっかりしているさま。毅然(きぜん)としてたじろがないさま。
    1. [初出の実例]「身づから、はかばかしく、すくよかならぬ心ならひに」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
  6. 性質や行動がきまじめであるさま。なまめかしさや風流なところがなく、律義(りちぎ)なさま。剛直であるさま。
    1. [初出の実例]「されど、すくよかなるは、『夜ふけぬ。御門あやふかなり』などわらひて出でぬるもあり」(出典:枕草子(10C終)一七九)
    2. 「吾妻人は、我かたなれど、げには心の色なく、情おくれ、ひとへにすぐよかなるものなれば」(出典:徒然草(1331頃)一四一)
  7. 無愛想で、とりつくしまもないさま。そっけないさま。
    1. [初出の実例]「かのをばに語らひ侍りて、きこえさせむと、すくよかに言ひて、物ごはきさまし給へれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
  8. 紙などが、かたく、ごわごわしているさま。
    1. [初出の実例]「ちうしのすくよかなるに包みて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開下)
  9. 山などがけわしいさま。険阻であるさま。
    1. [初出の実例]「すくよかならぬ山のけしき、木深く世離れてたたみなし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)

健よかの語誌

( 1 )通常よりもかたくこわばっている意を表わし、女性的な柔らかさをいう「なよよか」とは対をなす。「すく」は、「すくすくし」「すくむ(竦)」「きすぐ」などと同根か。
( 2 )中古仮名文献の例では、男性的な体格言動人柄についていう場合が多く、女性については健康さや心の強さについていう。中古末には「すくやか」の語形も出て、身体病気がなく健康な状態を意味する語となり、「すこやか」につながる。

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