元の美術(読み)げんのびじゅつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「元の美術」の意味・わかりやすい解説

元の美術
げんのびじゅつ

中国,元 (1271~1368) の絵画界では,孫君沢,丁野夫,盛懋 (せいぼう) らによる南宋院体画風の継承や禅余画家の活躍も閑却できないが,画壇一般の趨勢は南宋をこえて北宋,唐の絵画様式の復興であった。趙孟 頫 (ちょうもうふ) ,銭選,高克恭らによる青緑山水様式,董源 (とうげん) ,巨然および米法山水画風の復興がそれであり,元末四大家にいたっていわゆる南宗画の基本形式が完成した。他方,元中期以降,李成,郭煕の画風も元代画壇に深く浸透し,多くの影響を他の絵画領域に及ぼした。総じて元代絵画は表現過多で色調,墨調ともにどぎつく,墨線の肥痩も激しさを増した。書の世界では,絵画と同じく趙孟 頫の王羲之への回帰運動が指導性をもち,文人としての盛名もあって書界をリードした。仏教彫刻は宋代にもまして衰退し,居庸関のラマ教彫刻遺品を最大とするが,工芸ではなかんずく陶磁が生気を維持し,ことに染付には宋磁とは異なった生新の気がみられ,明代陶磁の先駆的現象を呈した。

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