山水画の一種。中国の画史には青緑山水の用例はなく,これに類するものとしては南宋の趙希鵠の《洞天清禄集》にみえる金碧山水である。北宋の米芾(べいふつ)の《画史》が金緑といい,南宋の鄧椿の《画継》が金碌というが,いずれも北宋末の山水画家王詵(おうしん)について述べられたものである。趙希鵠は盛唐の画家李昭道が初めて金碧山水を描いたといい,敦煌の壁画の山水図などを考えあわせると,このころ金泥や石緑,石青を主用する華麗な山水画が成立したことが推測される。そのような山水画が,北宋末から南宋にかけて,王詵,趙令穣,趙伯駒,銭選らによって復古的に描かれるようになって,金碧山水という名称が生まれたのであろう。ちなみに日本の平安朝のやまと絵について,《宣和画譜》は金碧を用いるといい,米芾は李昭道の父李思訓の画と混同される例を述べている。
執筆者:山岡 泰造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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