院体画(読み)いんたいが(英語表記)yuan-ti-hua

百科事典マイペディアの解説

院体画【いんたいが】

中国宮廷の画院の画家が描いた絵画。観賞的な花鳥画山水画人物画に独特な様式をみせるが,時代により画風も異なり,常に宮廷趣味が画風に反映された。精巧な写実,伝統の尊重,装飾性の重視が特色。北宋(960年―1127年)でははじめ黄氏体の花鳥画,王道真の道釈画李成郭煕(かくき)風の山水画が支配的であったが,北宋末の徽宗(きそう)による画院改革を通して徐氏体の色彩主義に近い崔白らの花鳥画,詩的情趣の表現を主とした馬遠夏珪らの山水画がとって代わり,李安忠李迪(りてき),李唐らを代表とする院体画の最盛期を迎えた。
→関連項目王淵翰林図画院賢江祥啓刻糸榊原紫峰残山剰水土佐光起文人画北宗画梁楷

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世界大百科事典 第2版の解説

いんたいが【院体画 Yuàn tǐ huà】

中国絵画の様式。院体とは宮廷画院の画体のことで,院体画とは画院の画風をもった絵画である。画院とは翰林図画院(かんりんとがいん)の略称で,ここには天子の私的な需要に応じたり,宮廷や官衙の障壁画や装飾に携わる画家がいた。唐の玄宗の開元26年(738)に翰林院が設けられ,工芸書画の徒がいて,待詔とか内供奉と呼ばれたが,張彦遠の《歴代名画記》には画院の名がみえ,また史館画直,集賢画直,少府監,尚方などの職名をもつ画家が挙げられているから,翰林院にのみ画工がいたわけではなく,集賢院などに所属するものもあったらしい。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

院体画
いんたいが

中国唐代以降、宮廷の用に応ずる絵画制作の機関である画院(五代・宋(そう)・明(みん)・清(しん)の諸朝に設けられ、宋代の正式名は翰林図画院(かんりんとがいん))の画家によって描かれた絵画。ないしはその様式(概して写実的で細密な画風)をもった画。院画ともいう。北宋末から南宋中期に傑作が多く、この時期が院体画の最盛期といえる。したがって一般に院体画といえば、北宋末の徽宗(きそう)朝(1100~25)以後と南宋の院体画様式の画をさすことが多い。南宋の画院はことに優れた画家が輩出し、花鳥画では李安忠(りあんちゅう)、李迪(りてき)、毛益、山水画では李唐、閻次平(えんじへい)、劉松年(りゅうしょうねん)、馬遠(ばえん)、夏珪(かけい)などが名高い。宮廷趣味に応じた独特の院体様式は、初め花鳥画において、五代蜀(しょく)の黄筌(こうせん)の鉤勒填彩(こうろくてんさい)(対象の輪郭をはっきりとって彩色する)による装飾的な様式、いわゆる黄氏体(こうしたい)が採用されて成立したが、やがて北宋後期になると徐氏体の没骨(もっこつ)画法(墨の濃淡の調子のみで対象をとらえる)を融合した様式へと変遷していった。山水画では、大自然の全景を大観的に描く李成、郭煕(かくき)の画風が北宋画院を代表する様式であったが、徽宗朝に至って、徽宗の指導のもとに、自然の一角を取り出して描き、感情移入の可能な画中人物や点景物を配して、詩的情趣を出すことを目ざした院体山水画様式が育成された。対角線の下半分に主要景物を近接して描くこの構図法は、後世「残山剰水(ざんざんじょうすい)」、また馬遠の名にちなみ「馬一角(ばいっかく)」などとよばれた。元・明以後、院体画風は形式主義に陥り、衰退していった。なお、南北朝・室町時代には宋元画が少なからず輸入され、その院体画は応永(おうえい)期(1394~1428)以降のわが国の山水画壇に大きな影響を与えている。[星山晋也]

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世界大百科事典内の院体画の言及

【花鳥画】より

…黄筌と子の黄居寀(こうきよさい)らの黄氏体は,鉤勒塡彩(こうろくてんさい)法を用いて華麗な富貴さに特色があり,徐熙と孫の徐崇嗣らの徐氏体は,水墨と没骨(もつこつ)画法を取り入れて瀟洒な野逸さに特色があった。次に北宋の画院では,初め黄居寀が勢力を振るい黄氏体が指導様式となったが,しだいに趙昌,易元吉,崔白などの写生画法が採用され,末期の徽宗画院は,写実を重視した徐黄折衷の院体画を成就した。南宋の画院はこの院体画を継承し,李迪(りてき),林椿(りんちん)らが動植物の性をとらえんとして,観察の細かい精緻な花鳥をかいた。…

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