公名(読み)キミナ

デジタル大辞泉 「公名」の意味・読み・例文・類語

きみ‐な【公名/君名/×卿名】

天台宗などで、新しく僧となる前の貴族子息を、父親の官職名などにより、大蔵卿おおくらきょう治部じぶ卿・大納言などと呼んだこと。また、その呼び名。

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精選版 日本国語大辞典 「公名」の意味・読み・例文・類語

きみ‐な【公名・君名・卿名】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「きみ」は公卿(くぎょう)の意 ) 天台宗などで、公卿・殿上人の子息を弟子とする場合、まだ得度していない児童に父の職名をつけて、大蔵卿(おおくらきょう)治部卿(じぶきょう)右中将、大納言などの名で呼ぶこと。また、その名。きょうみょう。
    1. [初出の実例]「切物、奇物責めはたり、出し挙げ借り上げ入り散らして、徳付き、公名付きなんどして、以ての外に過分に成り」(出典:源平盛衰記(14C前)九)

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改訂新版 世界大百科事典 「公名」の意味・わかりやすい解説

公名 (きみな)

君名とも書き,卿名(きような)ともいう。僧侶を宰相法印,大蔵卿法眼,少納言僧都など公卿の職名で呼ぶ名。中世,天台宗の寺院で,堂上公家の子息の未得度の児(ちご)を弟子にしたときに,その父の職名をつけて呼んだことによるという。《源平盛衰記》巻九に〈堂衆と申すは……近来行人とて山門の威に募り,切物,寄物責めはたり,出挙人に借しちらして徳付き,公名付なんどし以ての外に過分になり〉とあり,《海人藻芥(あまのもくず)》には,大臣ないし殿上人の子息を〈出世者〉,諸大夫ないし北面など侍の子息を〈禅侶〉と格付けしたうえで,〈禅侶は,古は多分国名を付す。近代は一向公名ばかりなり,その謂れ無きものか。侍法師は,近代は皆国名なり。古は多分聖名なり〉と説き,公名を大臣,殿上人の子息に見合うものとし,〈国名(くにな)〉〈聖名(ひじりな)〉に対比させている。
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