再生医療と細胞治療に関して、その有効性と安全性を確保するための法律。正式名称は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(平成25年法律第85号)。再生医療を行う医療提供者が講じるべき措置や、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚(はい)性幹細胞(ES細胞)など特定細胞加工物の製造許可に関する制度を定めている。これにより、再生医療を行おうとする者は、リスクの程度に応じて必ず審査委員会の審査を受け、厚生労働大臣が定める再生医療等提供基準との適合性の判定を受けたうえで計画書(再生医療等提供計画)を厚生労働省に提出することが義務づけられた。違反した場合の罰則規定も盛り込まれている。また、再生医療に用いられる特定細胞加工物についても、厚生労働大臣の許可を受けた特定細胞加工物製造事業者のみが製造できると定められた。
法律制定の背景には、幹細胞などを用いた再生医療で医療事故が少なからず発生しているという現状がある。再生医療のリスクの程度については、再生医療等技術が人の生命や健康に与える危険性に応じて高リスク、中リスク、低リスクに区分され、これに基づいて構成された審査委員会で審査される。高リスク(第一種再生医療等)はiPS細胞やES細胞、他人の細胞を使用する治療などで、おもにまだヒトに実施されていないものが対象となる。中リスク(第二種再生医療等)は体性幹細胞を使った機能の再生などが対象で、低リスク(第三種再生医療等)は加工したリンパ球ほかの体細胞などを用いるものが対象である。第一種および第二種再生医療等に関する審査委員会の正式名称は「特定認定再生医療等委員会」で、委員は医学や法律学の専門家、生命倫理の有識者ら8人以上で構成され、第三者として公平性と独立性を保ったうえで内容や手順などを審査する。これとは別に2014年(平成26)に施行された改正薬事法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。医薬品医療機器等法、薬機法と略す)では、再生医療等製品について有効性が推定され安全性が認められれば、早期に条件および期限つきで製造販売承認を特別に与えられると定められた。2013年4月には「再生医療推進法」も成立しており、日本の再生医療と細胞治療の早期の実用化推進が図られることになった。
[編集部]
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