改訂新版 世界大百科事典 「冠動脈危険因子」の意味・わかりやすい解説
冠動脈危険因子 (かんどうみゃくきけんいんし)
risk factor of coronary artery
冠状動脈硬化による疾患にかかりやすい素因のことである。危険因子を重複してもつ場合には相乗的に危険性が高まる。欧米の資料では,高脂質血症・高血圧・喫煙・糖尿病・肥満が最も重要で,主要危険因子と呼ばれる。日本では,高血圧が最も重要と考えられ,次いで高脂質血症・喫煙が重要であるが,肥満については明らかでない。
これらの危険因子はそれのない人と比べて,高血圧は男性で2.6倍,女性で6倍の危険性があり,高コレステロール血症では2~3倍,喫煙20本以上では2倍危険性が高い。脂質のうち,トリグリセド,β-リポタンパク質の高値はいずれも危険性を増し,逆にα-リポタンパク質(高比重リポタンパク質)およびそれを結合したコレステロールが多いと危険性が減る(これらを逆危険因子という)。したがって,植物油・不飽和脂肪酸の摂取は予防的に作用し,動物脂肪・飽和脂肪酸・コレステロール・糖質の摂取は危険性を高めるように作用する。
その他の危険因子としては,虚血性心疾患の家族歴,心電図の異常,痛風,高尿酸血症,高カロリー食,食塩・砂糖・コーヒーの摂取過量,管理職・専門職・座業などの職業,転居・転職・家族の不幸などの情動ストレス,行動的性格などがあげられ,男性は女性よりも危険率が高い。閉経期以後は女性も同様に危険率が高くなる。
→冠状動脈
執筆者:細田 瑳一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報