6~8月の3か月間の平均気温が平年並みの範囲を超えて低い夏をいう。天候不順で多くは冷害を伴う。冷夏には多雨寡照型と晴冷型とがあり、北冷西暑、北暖西冷のように地域差が際だつ場合もある。
気圧配置からみると、日本の冷夏には二つのタイプがある。その一つは、オホーツク海方面に高気圧が現れ、北日本ではこの高気圧からのやませ(陰湿な北東風)が吹き込んでくる場合である。最近の例では1993年(平成5)や2003年がそのような年であった。1993年8月や2003年7月の平均気温は、気象台や測候所で、観測開始以来の低い記録を更新した所が多かった。もう一つのタイプは、北日本を低気圧がしばしば通過することによる日照不足と、大陸から気温の低い北西風が流れ込む場合で、たとえば、1998年はこのため北日本のみ冷夏で、西日本や南西諸島では暑夏になった。
[根本順吉・青木 孝]
『根本順吉著『地球に何がおきているか――異常気象いよいよ本番』(1987・筑摩書房)』▽『近藤純正著『身近な気象の科学――熱エネルギーの流れ』(1987・東京大学出版会)』▽『内嶋善兵衛著『四季の農業気象台』(1990・農林統計協会)』▽『守谷昭著『米と人間――生きのびるために』(1994・新読書社)』▽『藤井宏一編著、石川真一ほか著『はじめてのえころじい』(1995・裳華房)』▽『卜蔵建治著『ヤマセと冷害――東北稲作のあゆみ』(2001・成山堂書店)』▽『佐伯理郎著『エルニーニョ現象を学ぶ』(2003・成山堂書店)』▽『桜井邦朋著『夏が来なかった時代――歴史を動かした気候変動』(2003・吉川弘文館)』▽『根本順吉著『異常気象――30年の記録から』(中公新書)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)
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…また一般に,集中豪雨や台風などのために人命が失われたり,建造物や農作物が壊滅的な被害を受けた場合,原因となった気象現象も異常気象という。
[実態]
寒冬,暖冬,冷夏,暑夏,長雨,干ばつ,豪雪などの異常気象が最近,社会の強い関心を集めている。その理由には天候の変動幅が従来になく大きく,観測開始以来第1位という記録が目立つようになったこと,社会・経済の構造が異常気象の影響をうけやすくなったことがあげられる。…
※「冷夏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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