やませ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「やませ」の意味・わかりやすい解説

やませ

漢字で山背をあてることが多いが、現在、東北北海道方面で凶作原因になる風として広く注目されている「やませ」は、三陸沖より内陸に吹き込んでくる北東気流であり、山を背にして吹く風ではない。この場合はむしろ闇風(やみかぜ)からの転化とみるべきで、沖の闇のように暗い空から吹き出してくるのが実感である。これを病み風(やみかぜ)の転化とする人もいる。

 やませの「せ」は風の古語で、元来は東北地方の日本海側で、山から吹き出す風についていわれていた。この風は上方(かみがた)に米などの荷を積み出すのに好都合なところから、船頭衆にはむしろ順風として喜ばれた。これがいつごろから現在使われているような悪風に転化したのか、現在なお十分に調査されていない。

根本順吉

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「やませ」の意味・わかりやすい解説

やませ

北海道や東北地方,関東地方梅雨や夏に吹く冷たい北東寄りの風。本来は山を吹き越す風を意味した。長期間にわたって吹くと冷害をもたらすため,餓死風や凶作風などといわれ恐れられてきた。冷たく湿ったオホーツク海気団からの北東気流で,もともと冷湿なうえ,霧を伴うために日照量が不足し,農作物への被害が大きくなることがある。

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百科事典マイペディア 「やませ」の意味・わかりやすい解説

やませ(山背)【やませ】

やませ風の略で山を越えて吹いてくる風の意味。たとえば山陰地方では山の方から吹く冬の寒風をいう。現在では東北地方や北海道で夏季,三陸沖やオホーツク海高気圧から吹き出してくる東よりの冷湿な気流をいい,長く続くと冷害の原因となる。
→関連項目オホーツク海気団

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世界大百科事典(旧版)内のやませの言及

【イネ(稲)】より

… 気象災害として最も恐れられているものは,冷害と台風害である。夏季,北日本の主として太平洋側の地域に吹き寄せる低温の偏東風(〈やませ〉と呼ばれる)は,イネが減数分裂期にある場合には,生殖細胞の不稔による障害型冷害を,また登熟期にある場合には,登熟不良による遅延型冷害をそれぞれ誘発する。広域にわたる冷害は,しばしば日本の米の総生産量を左右するほどの被害をもたらす。…

【風】より

…〈まつぼり〉は余分,へそくりなどの意味。 山背(やませ)本来は山を吹き越えてくる夏の東風のことで,フェーンの性質をもつ風。現在では北日本,特に三陸地方の初夏から盛夏にかけて,オホーツク海高気圧に伴って吹く冷湿な北東風をさし,凶作風として恐れられている。…

【東北地方】より

…最高気温の記録では山形市の40.8℃(1933年7月),酒田市の40.1℃(1978年8月)がある。また梅雨の時季から夏にかけて吹くオホーツク高気圧からの北東風〈やませ〉が長期にわたると太平洋岸の各地に異常な低温をもたらし,冷害をひきおこす。平地は日本海側では秋田平野,庄内平野,出羽山地内の大館(おおだて),横手,新庄,山形などの諸盆地,太平洋側では仙台平野と北上,福島,郡山盆地などがそれぞれ独立して存在する。…

【日本列島】より

…暖湿な空気が舌のような形(湿舌(しつぜつ))で前線に流れ込むと集中豪雨が降りやすくなる。一方,梅雨型の気圧配置が長く続くと,オホーツク海高気圧から吹いてくる北東の冷湿風(〈やませ〉という)が東北地方を中心に流れ込み,冷害のおそれがでてくる。7月半ば過ぎになると,梅雨前線は日本海方面に北上したり,または日本の南岸で消滅したりする。…

【冷害】より

…両高気圧の勢力関係で,梅雨前線の北上が遅れるか高緯度地方の寒気が強いと,夏型の天気とならないか夏が短く,冷害となる。オホーツク海高気圧から吹き出す寒冷な偏東風は,東北北部では〈やませ〉と呼ばれ,多くの冷害をひき起こしてきている。広域での被害は,7,8月の気温と関係が深く,北海道地方では7,8月の平均気温が22.0℃以下になると水稲の収量は減りはじめ,2℃低下した20℃では約5%,3℃の低下で約30%,4℃の低下で約65%減収する。…

※「やませ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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