気圧分布の状態をいう。通常このことばは地上天気図について用いられるが、上空の気圧配置という言い方もありうる。
各季節には、それぞれ現れやすい気圧配置の型があり、その季節の天気や気候の特徴は、それによって説明できることが多い。また、ある季節に、他の季節に特徴的な気圧配置が現れると、季節外れの天気になる。日本付近に現れる特徴的な気圧配置は、モデル図( )を参照のこと。実際の天気図で気圧配置の型をみるときは、あまり細かい部分にとらわれずに、巨視的にその特徴をとらえることがたいせつである。また、気圧配置は、単に等圧線の形としてではなく、それによっておこされる気団の動きや天気の変化などと関連させて理解する必要がある。このような考え方から、気圧配置の型を天気図型とよぶ。
[倉嶋 厚・青木 孝]
日本の西の大陸方面に高気圧、東の太平洋に低気圧があって、日本付近の等圧線は縦縞(たてじま)になっている。代表的な冬型気圧配置で、大陸からの寒気団が北西季節風となって日本列島を吹き抜け、日本海側の地方は雪や雨、太平洋側の地方は晴れの天気が卓越する。冬によく現れ、3~7日間ほど持続して、ときには強い寒波をもたらす。秋にこの型が現れると「木枯し」、春は「寒の戻り」になるが、いずれも長続きせず、強い北風は半日か1日で吹きやむことが多い。
[倉嶋 厚・青木 孝]
東シナ海方面に発生した低気圧が、日本の南の近海を発達しながら北東進する型。四季を通じて現れ、南岸に接近して通ると、太平洋側の地方を中心に降水があり、離れて通ると、降水域は陸地にかからない。とくに春にこの型が現れると、冬の間、西高東低型で乾燥し、晴天の続いてきた太平洋側の地方に、雨や雪が降る。低気圧の発生位置が台湾付近のことが多いため、昔はこの低気圧を台湾坊主とよんだが、近年は台湾低気圧とか東シナ海低気圧といいかえられることが多い。
[倉嶋 厚・青木 孝]
低気圧が日本海を発達しながら北東進する型。四季を通じて現れるが、典型的なものは春に多い。この低気圧に吹き込む気温の高い南寄りの気流は、「春一番」などの南風となって、日本列島を吹き抜ける。この種の風が吹くと、日本海側の地方でフェーン現象、多雪地帯では雪崩(なだれ)や融雪洪水がおこりやすい。低気圧から南西に伸びる寒冷前線が通る前は、暖かい南風がとくに強まり、通り過ぎると北寄りの風が吹いて気温が急降する。前線の近くでは春雷、竜巻(たつまき)、突風、局地的豪雨があり、砂嵐(あらし)、火災、海難などがおこりやすい。なお、日本海と南岸沿いまたは本州上を二つの低気圧が同時に通る型を、「二つ玉低気圧型」といい、悪天をもたらす。また南岸低気圧、日本海低気圧、二つ玉低気圧が日本の東の海上に進むと西高東低型になり、春ならば「寒の戻り」、秋ならば「木枯し」になる。
[倉嶋 厚・青木 孝]
高気圧が、西から東へほぼ一定方向に規則的に動く型。春と秋に現れることが多く、先行する高気圧との間に挟まれた気圧の谷があるので、3~4日の周期変化を伴う。
[倉嶋 厚・青木 孝]
いくつかの移動性高気圧が、それぞれの間に強い低気圧や気圧の谷を伴うことなく、ほぼ東西に並んで、ゆっくりと東進する型。晩春、初夏や秋の代表的気圧配置で、高圧帯の域内では晴天が持続する。高圧帯は、北西から南東、あるいは南西から北東に伸びることもあり、極端な場合は南北に伸びる高圧帯もありうる。東西に伸びる高圧帯の南縁には前線があることが多い。5月に本土が高圧帯による初夏の晴天に覆われているとき、沖縄や小笠原(おがさわら)諸島は、この前線によって梅雨に入る。一般に高圧帯が北偏して通ると、その南縁にあたる地方では天気がぐずつく。
[倉嶋 厚・青木 孝]
オホーツク海、日本海北部、カムチャツカの南方海上などの高気圧(いわゆるオホーツク海高気圧)と、日本のはるか南東洋上の亜熱帯高気圧(いわゆる小笠原高気圧、太平洋高気圧)の間の梅雨前線が、日本の南岸沿いにほぼ東西に伸びて停滞する型。オホーツク海高気圧が存在せず、梅雨前線だけの場合もある。梅雨前線の北側300キロメートルぐらいまでは雨、300~500キロメートルでは曇り所々雨、500~800キロメートルぐらいは曇り、それより北では快晴、また梅雨前線の南側100~200キロメートルでは所々で対流性の強い雨というのが標準的な天気分布であるが例外も多い。梅雨後期には亜熱帯高気圧が強まり、その範囲が日本の南岸まで広がり、梅雨前線は日本の上にあって、各地に集中豪雨を降らせることが多い。
[倉嶋 厚・青木 孝]
梅雨前線帯が樺太(からふと)(サハリン)から沿海州方面まで北上し、太平洋の亜熱帯高気圧が日本を覆う型。太平洋高気圧をクジラの胴体の下半分に見立てると、西日本の膨らみの部分は尾にあたるので、「鯨(くじら)の尾型」とよばれている。この尾の上空には、独立の中心をもつ上層高気圧があり、チベット高気圧に連なっている。この型には持続性があり、高気圧域内では盛夏の炎天が続き、干魃(かんばつ)になりやすい。太平洋の高気圧から大陸に吹き込む南寄りの気流は、冬の北西季節風に対する、夏の南東季節風である。なお で、華南、台湾方面にかけて熱帯内収束帯が描かれているが、これは北東貿易風と熱帯の南西モンスーンの収束する線で、台風はここで「熱帯低気圧」として発生することが多い。
[倉嶋 厚・青木 孝]
秋になると盛夏の太平洋高気圧は南東方に後退し、一方、北西方では大陸高気圧が発達して、日本は夏と秋の高気圧の谷間にあたるようになる。そして、台風がこの谷間を北上する。南洋方面の海面は夏の間、太陽エネルギーを多量に吸収して、海水温の高い区域が北に広がっているうえに、秋の台風は夏に比べると比較的低緯度帯で発生し、暖かい熱帯海域を大きく回ってくるので発達し大型になりやすい。
[倉嶋 厚・青木 孝]
大陸の高気圧が北偏しながら日本付近に張り出し、これと太平洋高気圧との間の前線が、日本の南岸沿いに東北東から西南西に伸びてほぼ停滞し、その上を低気圧が東北東進する型。9月中ごろから10月中ごろにかけて現れる場合には、この前線は秋雨前線(あきさめぜんせん)とよばれ、日本の南岸にあたる地方に、梅雨に似た「秋の長雨(秋霖(しゅうりん))」をもたらす。また、この前線に台風が近づいたり、前線上の温帯低気圧に南からの湿った気流が流入すると、秋雨前線豪雨になりやすい。
[倉嶋 厚・青木 孝]
大陸高気圧が南偏して日本に張り出し、秋雨前線が南下して日本から遠ざかると、「秋の長雨」が明けて、秋晴れの季節に入る。
[倉嶋 厚・青木 孝]
移動性高気圧や高圧帯が、ある地域の北を通り、その地域が北の高気圧の南縁の前線の近くにあたると、曇雨天が続く。このような場合を北高型という。大陸高気圧北偏型や梅雨型(前期)も、北高型の一種とみなすことができる。
[倉嶋 厚・青木 孝]
北高型の場合、高気圧の南縁では北東風が卓越する。その点を強調して、北高型を北東気流型ということがある。またとくに大陸高気圧北偏型を北東気流型とよんだり、関東地方などに局地的に曇雨天をもたらす北東気流に限定して、この呼称を用いたりする。
[倉嶋 厚・青木 孝]
盛夏型や大陸高気圧南偏型のなかで、とくに高気圧の南偏度の強い場合や、移動性高気圧や高圧帯が日本の南を通る型を南高北低型とよぶことがある。本土では一般に気温の高い晴天が続く。なお、北高、南高と表現する場合の北、南は、当該地域についてであり、本州を移動性高気圧が通る場合、それは沖縄にとっては北高型になる。
[倉嶋 厚・青木 孝]
日本の東方に高気圧がある盛夏型、梅雨型の一部が、この型に相当する。
[倉嶋 厚・青木 孝]
『木村龍治監修『気象・天気図の読み方・楽しみ方』(2004・成美堂出版)』▽『白木正規著『百万人の天気教室』(2007・成山堂書店)』▽『日本気象予報士会編『気象予報士ハンドブック』(2008・オーム社)』▽『青木孝監修『図解 気象・天気のしくみがわかる事典』(2009・成美堂出版)』
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…これらの諸単位の関係は次式のとおりである。 1atm=760mmHg=1013.25mb =1013.25hPa
[気圧分布,気圧配置]
大気の水平加速度を生じる力のうちで最も主要なものは水平方向の気圧差なので,気圧は重視される。空気は気圧の高い方から低い方へ流れる。…
※「気圧配置」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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