改訂新版 世界大百科事典 「分野調整法」の意味・わかりやすい解説
分野調整法 (ぶんやちょうせいほう)
正式には,〈中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律〉といい,〈中小企業者の経営の安定に悪影響を及ぼすおそれのある大企業者の事業の開始又は拡大に関し,その事業活動を調整することにより中小企業の事業活動の機会を適正に確保する〉ことを目的とする。1977年公布。中小企業と大手企業との事業分野の調整については,第2次大戦後しばしば国会の論議の的となってきた経緯があるが,1973年の石油危機を境とする経済成長の鈍化のもとで,大手企業が豆腐業界やクリーニング業界,段ボール業界などに進出しようとする事例が相次いだので,にわかに調整のための立法化への気運が盛り上がった。立法化への過程では,〈既存の法規と行政指導を活用すれば,新規立法の必要なし〉とする消費者団体代表と〈勧告にとどめず,公表,命令,罰則を加えるべきだし,対象業種に小売業も含めるべきだ〉とする中小企業団体代表との意見が対立するなど,かなりの曲折があったが,小売業については商調法(小売商業調整特別措置法)の改正をもって対処することとし,政府原案よりも少し規制が強められた程度で,1977年5月の通常国会で可決成立した。
この法律に基づく調整は,中小企業分野等調整審議会の審議を経て,通産大臣が,必要に応じて勧告,命令,指導を行うことになっているが,単に事業の調整を行うだけでは消費者の利益が無視されることになるので,同法の目的の中で,とくに一般消費者の利益にも配慮すべきことが明記されている。
執筆者:木綿 良行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報