改訂新版 世界大百科事典 「列仙伝」の意味・わかりやすい解説
列仙伝 (れっせんでん)
Liè xiān zhuàn
中国,赤松之(せきしようし)から玄俗(げんぞく)にいたる71人の仙人の伝記集。黄帝,老子,東方朔(とうほうさく)たちもあつかわれ,それぞれの伝記のあとに賛があり,巻末に総賛がある。前漢の劉向(りゆうきよう)の撰述と伝えられるが,その真偽のほどは古くから疑われている。しかし六朝時代にはたしかに存在していた。この書物をはじめて著録する《隋書》経籍志は,漢の阮倉に《列仙図》があったというから,《列仙伝》もなんらかの図をふまえて書かれたものかもしれない。仙人の伝記はこのほかにも少なからず存在する。たとえば東晋の葛洪(かつこう)の《神仙伝》は10巻の大部なものであるが,梁の陶弘景はそれを読んで神仙道の修行にうちこむ決心をかためたといわれる。また唐の王松年の《仙苑編珠(せんえんへんじゆ)》は4字句を用いて韻をふむ《蒙求(もうぎゆう)》のスタイルにならう。明代には挿絵入りの《列仙全伝》が流布した。唐の杜光庭の《墉城(ようじよう)集仙録》は女仙の伝記集である。
執筆者:吉川 忠夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報