中国神話にみえる農業神。《孟子》滕文公上に〈神農の言を為すもの許行〉とあって,その学派の成立をうかがわせるが,神話的な伝承はほとんどなく,《易》繫辞伝下に,庖犠(ほうぎ)氏(伏羲)についで興り,農耕や交易を教えたことがみえ,のち先農としてまつられた。これを炎帝とするのは漢以後のことである。《淮南子(えなんじ)》脩務訓に〈百草の滋味を嘗(な)め,一日にして七十毒に遇う〉とあり,本草医学の神となったことを記している。《漢書》芸文志に神農黄帝の書として,《神農》20編,《神農黄帝食禁》7巻などを著録するが仮託。三皇説が出るにおよんで,《荘子》盗跖(とうせき)に〈民その母を知るもその父を知らず。麋鹿(びろく)とともに処(お)り,耕して食い,織りて衣(き)る〉と上古無為の理想の時代とするのは,《礼記(らいき)》礼運の上古を大同の世とするのと同じ考えかたである。神話のうちでは最も作為的な神であるが,民衆の生活のなかでは永く信仰の対象とされた。
執筆者:白川 静
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
中国古代の伝説上の帝王。神農の名前が最初に文献に現れるのは『孟子(もうし)』であり、これには、戦国時代、許行という神農の教えを奉じる人物が、民も君主もともに農耕に従事すべきであると主張したという話が載っている。許行が信奉した神農がいかなる存在であったかは明らかではないが、漢代になると、神秘的な予言の書である『緯書(いしょ)』などにしばしば神農のことが記されるようになる。それによれば、神農は体は人間だが頭は牛、あるいは竜という奇怪な姿をしており、民に農業や養蚕を教えたり、市場(いちば)を設けて商業を教えるほか、さまざまな草を試食して医薬の方法を教え、五絃(げん)の琴を発明したとされる。こうした業績から三皇の一人に数えられることもあるが、神農に関する具体的な記述は古い文献にみえないため、神農の伝説には後代の知識人が付け加えた部分が多いと考えられている。
[桐本東太]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…彼は,医薬を発明し,虫害・鳥獣の害を除去する法を定めたと伝えられる。農耕や医薬,占い,法などを発明した神農(しんのう)や,書契の法を考案し婚姻の礼を定め,漁猟や祭器を教えた伏羲(ふくぎ)なども,中国神話における文化英雄である。ギリシア神話のプロメテウスも,文化英雄の典型である。…
…その起源については,香具師の親分連が秘蔵する《十三香具・虎之巻》によれば,源頼朝の密命を受けた長野録郎高友が薬売りをしながら各地で隠密探索をしたことに始まり,大岡越前守のとき,香具師が隠密をして犯人逮捕に協力することとひきかえに営業を公許されたとか,香具師は聖徳太子の二子に始まるとするなどの伝承があるが,定かではない。香具師はしばしばみずからを神農と称するが,その職神は薬種神の神農皇帝であり,親子盃その他の儀式に際しては,神農の掛軸が飾られる。その組織は,営業組織としての帳元,帳脇,世話人,若い衆の区分をもつと同時に,親分,子分,兄弟分の身分的絆(きずな)によって強くつながれている。…
※「神農」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加