制度的革命党(読み)せいどてきかくめいとう(英語表記)Partido Revolucionario Institucional; PRI

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「制度的革命党」の意味・わかりやすい解説

制度的革命党
せいどてきかくめいとう
Partido Revolucionario Institucional; PRI

メキシコ政党。 1929年結成された国民革命党後身で,メキシコ革命党を経て 46年1月に現党名に改称。全組織労働者の 90%をかかえるメキシコ労働者連盟 CTM,全国農民連盟 CNC,全国組織一般連盟 CNOPで構成される3部会をもち,3部会の指導者が上下両院の議席のほとんどを占め,3部会の上層部は資本家,地主官僚と一体化しほぼ独裁の形で国政を牛耳ってきた。イデオロギーは革新から保守まで種々雑多で,あらゆる事態を吸収できる柔軟性をもち,長期安定政権を確保していた。だが大統領選挙での得票率は年々低下し,88年9月の大統領選挙でカルロス・サリナス候補が当選したものの,50.7%と史上最低の得票率であった。さらに同時に行われた議会選挙でも,500議席のうち 240議席を野党に占められることになり,サリナス大統領は指導層の選出を投票制にするなど硬直化した党組織の改編に着手。 94年8月の大統領選挙でエルネスト・セディジョが当選したが,通貨危機に見舞われるなどきびしい政局運営を迫られた。 97年7月に行われた中間選挙では下院で 238議席と,結党以来初めて過半数を下回る歴史的敗北を喫し,同時に実施されたメキシコシティー市長選挙でも革命民主党候補に敗れたほか6州知事選挙でも2州で敗北した。 2000年7月の大統領選挙では,国民行動党ビセンテ・フォックス候補に敗れ,同時に行われた総選挙でも上下両院で同党に敗北。 71年ぶりに政権の座を明渡すことになった。

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百科事典マイペディア 「制度的革命党」の意味・わかりやすい解説

制度的革命党【せいどてきかくめいとう】

1929年以来メキシコを一党支配し続けている政党。Partido Revolucionario Institucional(略称PRI)。同年,雑多な集団によって構成された革命勢力が政治からの軍部排除,メキシコ革命で獲得した権力の維持・強化を目的に結成した国民革命党(PNR)が前身。1946年に改編されて〈制度的革命党〉となり,今日まで政権を保持。メキシコの全有権者数の3分の1にあたる党員を擁し,大統領選挙・上下両院議員選挙でも圧倒的な勝利を獲得。しかし1982年の金融危機を契機に政治の腐敗を糾弾する声が高まり,その支配体制にかげりが見えはじめ,1997年7月の国会選挙では39%しか得票できず,単独過半数の議席をはじめて失った。
→関連項目カルデナスメキシコ(国)

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「制度的革命党」の解説

制度的革命党(PRI)(せいどてきかくめいとう)
Partido Revolucionario Institucional

カルデナス時代に創設された一党支配のメキシコ革命党が,1946年いったん解消されたうえで組織された政党。労働者,農民,企業家を含む国内の多くのセクターを基盤として,それらの利害を調整しながら安定した政治をめざす民族主義政党として機能した。PRIのもとで,30年代の急進的路線から穏健路線への転換が行われ,第二次世界大戦後も産業の発展,経済成長率の上昇を実現したが,70年代以後の対外経済危機,政府与党の腐敗,サパティスタ国民解放軍の反乱などの事態に直面して急速に力を失い,2000年の大統領選挙で野党に敗北した。

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世界大百科事典(旧版)内の制度的革命党の言及

【メキシコ】より

…軍部の政治からの排除は1940年代に完了し,46年以降,歴代の大統領はすべて文民出身である。
[一党支配体制]
 第2の,そして最大の特徴は,制度的革命党(PRI)による一党支配体制にある。PRIの誕生は1946年であるが,その前身は1929年に創設された国民革命党(PNR)である。…

【メキシコ革命】より

…国民参加の民主政治を保障し,かつ独裁化しえないが強力な権限を大統領が発揮しうる政治制度をつくりあげたことは,今日のメキシコの政治安定と経済発展の基礎となっている。1929年に革命勢力を結集して結成された国民革命党は38年に再編されてメキシコ革命党となり,46年に再び改編されて今日まで政権を保持している〈制度的革命党〉へと発展したが,この一党独裁体制は他のラテン・アメリカ諸国で顕著に発生する軍部による政治への介入を封じる一方,農民,労働者,中産階級の要求をくみ上げる制度として機能し,政治安定の基礎となった。革命の主要な成果の一つであった農地改革はとりわけカルデナス大統領時代(1934‐40)に実施されて,メキシコの伝統的な大土地所有制はほぼ1940年までに崩壊し,代わって土地の共有を基本理念とするエヒード制が新しい土地制度の主力となった。…

※「制度的革命党」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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