剣歯虎(読み)ケンシコ(英語表記)saber-toothed tiger

デジタル大辞泉 「剣歯虎」の意味・読み・例文・類語

けんし‐こ【剣歯虎】

ネコ科哺乳類。8000年くらい前に絶滅し、北米最新世地層から化石で発見された。ライオンくらいの大きさの食肉獣で、上あごの犬歯が短剣状に発達している。スミロドンサーベルタイガー

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精選版 日本国語大辞典 「剣歯虎」の意味・読み・例文・類語

けんし‐こ【剣歯虎】

  1. 〘 名詞 〙 ネコ科の哺乳類。約八〇〇〇年前に絶滅した、ライオンくらいの大きさの食肉獣。上あごの犬歯が発達している。北米の最新世の地層から化石で発見された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「剣歯虎」の意味・わかりやすい解説

剣歯虎
けんしこ
saber-toothed tiger
saber-toothed cat
[学] Machairodus

絶滅したネコ類の1グループで、サーベルタイガーともよばれる。上顎(じょうがく)の牙(きば)(犬歯)が短剣のように発達したネコ科のマカイロドゥス亜科のもので、ロサンゼルス郊外にあるランチョ・ラ・ブレアRancho La Breaのタール層から発見されるスミロドンSmilodonはその代表的なもの。このタール層は更新世後期の約1万4000年ぐらい前のものとされていて、鳥類の化石がたくさんみつかっている。発掘されたスミロドンの遺骸(いがい)は、タールに足をとられて沈みかけていたバイソンマンモスゾウを集団で襲った際、自分たちもともにタール中に埋もれてしまったとされていて、現地にあるページ博物館で復元され、展示されている。

 スミロドンは、体長は2メートル、肩の高さは1メートルぐらいのライオンほどの大きさで、上顎には長くて湾曲した剣のような牙があり、その縁部は鋸(のこぎり)のようにとがってぎざぎざになっていた。下顎(かがく)の関節は90度ぐらいまで開くことができ、口を大きく開いて大形の獲物を背後から襲い、鋭くて長い牙で背中を突き刺すことができた。スミロドンはネコ科に属するので、正しくは剣歯猫なのであるが、剣歯虎とよばれてきた。先祖地質時代の第三紀の漸新世(約3700万年前)に求められ、この時期にこのマカイロドゥスのグループは、北アメリカ大陸でトラやライオンなどのネコ類のグループから分かれ、次の中新世(約2400万年前)にアジアからヨーロッパまで分布を広げた。その後、第四紀の更新世になって、現在のペンシルベニアやカリフォルニアから南米アルゼンチンのパンパス平原にまで進出して、ゾウのような大形獣を襲っていたが、それらの大形獣の絶滅とともに、8000年ほど前に姿を消した。この剣歯虎(猫)の仲間は、化石として中国大陸や朝鮮半島からも発見されているが、日本列島からはみつかっていない。

[亀井節夫]

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百科事典マイペディア 「剣歯虎」の意味・わかりやすい解説

剣歯虎【けんしこ】

第三紀末〜更新世に栄えたネコ科の肉食獣の俗称。サーベル形の犬歯が特徴で,その発達は更新世のスミロドンで頂点に達した。スミロドンは大きさがライオンぐらいで,南北アメリカにすむ。大型獣を襲い,長い牙(きば)(犬歯)を首すじに突き刺したとされる。

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改訂新版 世界大百科事典 「剣歯虎」の意味・わかりやすい解説

剣歯虎 (けんしこ)

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世界大百科事典(旧版)内の剣歯虎の言及

【スミロドン】より

…剣歯虎(けんしこ)saber toothed tiger(cat)ともいう。食肉目ネコ科に属する絶滅獣の1属。…

【定向進化】より

…古くから定向進化の好例とされてきた古生物がいくつかある。定向進化論者は,ジュラ紀のカキ類グリフェアGryphaeaは有用の限界を越えて過剰に殻が巻き絶滅に追いこまれたとし,氷河期の巨大な角をもつオオツノジカ,上顎の犬歯が極度に発達した剣歯虎(けんしこ)(スミロドン)も非適応的進化の産物であって,自然淘汰説では説明できないとした。しかし,最近の研究はいずれもその解釈には否定的で,例えばグリフェアはより充実した化石記録によって逆に巻きがゆるむ方向に進化したことが明らかにされたし,オオツノジカの角は性淘汰で,剣歯虎の犬歯は力学的に検討されて機能的な意味があると説明されるようになった。…

【ネコ(猫)】より

… 大型の獲物を殺すことのできないニムラブスの欠点を埋めたのが,次に現れたマカエロズス亜科Machairodontinaeである。マカエロズスは2600万年前の中新世前期に出現し,第四紀のおよそ1万年前に滅んだグループで,有名な剣歯虎(けんしこ)(サーベルタイガー)類スミロドンSmilodonなどである。この仲間では,上あごの犬歯が大きく発達して短剣状となっており,きばの長さは17~20cmもある。…

※「剣歯虎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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