改訂新版 世界大百科事典 「スミロドン」の意味・わかりやすい解説
スミロドン
Smilodon
剣歯虎(けんしこ)saber toothed tiger(cat)ともいう。食肉目ネコ科に属する絶滅獣の1属。アラスカ,北アメリカ中南部,南アメリカのブラジルやアルゼンチンの第四紀更新世の地層から化石として発見されている。肩高1mでライオンぐらいの大きさ,上顎の犬歯が牙状に長く下方に伸びていて,その前後縁にはのこぎりのようなぎざぎざのきざみがある。下顎の先は,上顎の長い牙を受けるため短縮していた。カリフォルニアのランチョ・ラ・ブレアにはタールの池があり,そこに落ちこんだたくさんの動物が発掘されて有名であるが,スミロドンの化石も多く,共に産出するアメリカマストドンのような大型獣を襲い,長い牙で首筋を刺したとされる。また,スミロドンの骨には人為加工の跡のあるものもあり,人類と共存していたことが知られている。獲物としていた大型獣の滅亡と並行して,8000年前ごろに絶滅している。先祖型のマカイロダスMachairodusは中新世にヨーロッパ,アフリカ,アジア,北アメリカと分布が広い。鮮新世から更新世にヨーロッパ,アジア,アフリカにいたメガンテレオンMeganthereonやホモテリウムHomotheriumは,いずれも上顎の犬歯が牙状に長く,スミロドンと類縁が深いものとされ,広義の剣歯虎として扱われることもある。しかし,スミロドンとちがって牙がいくらか短かったり,縁部にきざみがないことなどで区別される。
執筆者:亀井 節夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報