出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌や作用が低下することにより、副甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)とは逆に低カルシウム血症、高リン血症などを来す病気です。
副甲状腺からのPTH分泌が低下した特発性および続発性と、PTH分泌は保たれているにもかかわらずPTHの作用が損われている
偽性副甲状腺機能低下症は、PTHによる細胞内シグナルの伝達機構(メカニズム)の障害が原因で、その異常部位によりさらに細かく分類されています。
主な症状は低カルシウム血症によるもので、手足のこむら返り、ぴりぴりするしびれ感、けいれん(テタニー)発作などがみられます。ひどい場合には全身性
偽性副甲状腺機能低下症のなかには、オールブライト
この場合、ほとんどは遺伝性で同じ家系内に発症がみられますが、副甲状腺機能、カルシウムが正常で体型の異常だけが遺伝することもあります。
低カルシウム血症と高リン血症があり、腎機能低下がなければ副甲状腺機能低下症と診断されます。PTHの分泌が低下する特発性および続発性では、インタクトPTHという測定法で30Pg/ml以下になります。インタクトPTHが30Pg/mlを超える場合には偽性と診断されます。
偽性副甲状腺機能低下症の場合には、PTHの細胞内シグナルの異常部位により病型を決めるために、PTHを注射して反応をみるエルスワース・ハワード試験という検査を行います。
アルファカルシドール(アルファロール、ワンアルファ)またはカルシトリオール(ロカルトロール)という活性型ビタミンD製剤を内服します。活性型ビタミンDは、ビタミンというよりは体内でビタミンDからつくられる一種のホルモンで、PTHとともに血中カルシウム濃度を維持するのに大切な役割を果たしています。
治療の目的は、低カルシウム血症によるテタニー発作やしびれをなくすことで、必ずしもカルシウム濃度を完全に正常化する必要はありません。
活性型ビタミンDを内服している副甲状腺機能低下症の患者さんでは、血中のカルシウム濃度に比べて尿中のカルシウム排泄が増えやすくなります。そのため、
低カルシウム血症の原因には、副甲状腺機能低下症のほかにもさまざまなものがあります。副甲状腺機能低下症が疑われる場合には、内分泌の専門医の診察を受けることをすすめます。
井上 大輔
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
副甲状腺ホルモンが足りないためにおこる疾患。原因は自己免疫機序による特発性のものと、甲状腺腫瘍(しゅよう)の手術の際、いっしょに副甲状腺(上皮小体)をやむをえずとってしまった場合や、腫瘍の放射線治療のために副甲状腺機能が低下してしまった場合などがある。特徴的な症状はテタニー発作である。まず手足のしびれがおこり、ついで手の指先をすぼめて手首を曲げた特有のけいれんがみられる。ときには、けいれんが全身におこり、てんかんと間違えられることがある。喉頭(こうとう)に発作が現れると、喉頭けいれんと呼吸困難をおこす。また、爪(つめ)の表面が不整で横溝ができたり(モニリア症)、白内障がみられることが多い。なお、血液中の副甲状腺ホルモンの濃度が正常でありながら、このホルモンを受け入れるレセプター(受容器)が異常でホルモンの効果が現れず、副甲状腺機能低下症を示すものがある。これを偽性副甲状腺機能低下症とよぶ。治療はビタミンDとカルシウム剤を毎日服用すればよい。
[高野加寿恵]
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