そのもの自体は薬理作用はないが、生体内で代謝されて初めて活性物質に変化して薬効を現す薬物。すなわち、プロドラッグをつくるということは、生理活性を有する化合物を化学的に修飾して作用のないものとし、生体内で酵素的に元の活性物質に戻すような化合物をつくることを意味する。プロドラッグの目的は、安定性の向上、副作用の軽減、生物学的利用性の改善、不快な味やにおいの遮断、水溶性の向上、作用の持続化などがあげられる。実例としてタランピシリン(ペニシリン系抗生物質)をあげることができる。タランピシリンはアンピシリンをエステル化したもので、そのものは抗菌力は示さないが、腸壁内のエステラーゼで分解されて元のアンピシリンとなって抗菌力を現す。吸収が大で、血中濃度も上昇する。テガフール(制癌(がん)剤)はフルオロウラシルのプロドラッグで、副作用を減じた例である。苦味を遮断した例にプロピオン酸ジョサマイシン(マクロライド系抗生物質)があり、水溶性を増加させたプロドラッグの例にはコハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム(副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤)がある。とくに抗生物質や消炎鎮痛剤などでは生物学的利用性の向上、副作用の軽減を目的として新しい医薬品が開発されている。プロドラッグは新医薬品開発の一つの方法であるといえる。
[幸保文治]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…このような場合,薬物の物理化学的性質を考慮に入れて,化学構造式を設計する必要がある。さらに,生体内で代謝をうけて有効な薬物となるものもある(これがプロドラッグである)。この場合は代謝作用を考慮しなければならない。…
※「プロドラッグ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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