勅符(読み)ちょくふ

精選版 日本国語大辞典 「勅符」の意味・読み・例文・類語

ちょく‐ふ【勅符】

  1. 〘 名詞 〙 古文書様式一つ。大宝令公式令に規定があったが、養老令で除かれた。国家の重要事件に際して天皇の勅を直接に国司に下す文書。勅符の伝存するものはない。平安時代になっても、固関、開関などのときには儀礼的に勅符が内記によって作成された。
    1. [初出の実例]「遣勅符数十条、散擲諸国」(出典:続日本紀‐天平一二年(740)九月癸丑)

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改訂新版 世界大百科事典 「勅符」の意味・わかりやすい解説

勅符 (ちょくふ)

大宝令に定められている文書様式の一つ。大宝公式令の符式条の注に〈勅符其国司位姓等〉の規定があり,主として軍事外交など緊急を要することがらについて勅符が発せられた。発行手続は通常の勅旨と異なって,中務省を経由せず,弁官において作成されるのが特徴であった。大宝令制下における勅符施行の例として,新羅との関係が緊張していた時期の出雲国計会帳に勅符発遣のことが見え,また740年(天平12)の藤原広嗣の乱の際,大宰府管内諸国の官人・百姓等にあてて勅符多数を発給したことが見える。勅符の規定は養老令において削除されたが,実際には引き続いて行われ,六国史等にその例が散見する。例えば836年(承和3)遣唐使船の漂着の際,あるいは翌年陸奥・出羽における騒擾の際には,飛駅奏上を受けて勅符が発せられている。また《貞観儀式》の飛駅儀,固関使儀,駅伝儀などには,勅符の作成・発遣の行事が定められている。
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