中務省(読み)なかつかさしょう

精選版 日本国語大辞典 「中務省」の意味・読み・例文・類語

なかつかさ‐しょう ‥シャウ【中務省】

〘名〙 令制での八省の一つ内廷の政務を取り扱い、八省のうちで最も重要とみなされていた宮司飛鳥浄御原令制では中宮と表記された。卿以下の四等官は天皇に近侍し、詔勅の宣下や位記の発行、上表の受納などをつかさどる。総じて、国政機構である太政官と天皇との間を仲介する役割を分担したといえる。四等官のほか、品官(ほんかん)として帯剣して天皇を侍衛する侍従や内舎人、詔勅などを起草する内記、蔵の鍵を監視し大蔵省内蔵寮の物の出納に立ち会う監物や典鑰(てんやく)、鈴印伝符を保管する主鈴があった。管轄下に中宮職のほか、六寮(大舎人・図書内蔵・縫殿・陰陽・内匠)、三司(画工・内薬・内礼)がある。なかのまつりごとするつかさ。なかのまつりごとのつかさ。なかのつかさ。〔令義解(718)〕

ちゅうむ‐しょう ‥シャウ【中務省】

〘名〙 (「中務省(なかつかさしょう)」の音読み) 令制で、八省の一つ。詔勅の宣下などをつかさどった官司。〔和英語林集成再版)(1872)〕

なかのまつりごと‐の‐つかさ【中務省】

〘名〙 =なかつかさしょう(中務省)〔二十巻本和名抄(934頃)〕

なか‐の‐つかさ【中務省】

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デジタル大辞泉 「中務省」の意味・読み・例文・類語

なかつかさ‐しょう〔‐シヤウ〕【中務省】

律令制で、太政官だいじょうかん八省の一。天皇に近侍し、詔勅の宣下や位記いきの発行、上表の受納など、宮中の政務をつかさどった。四等官のほかに侍従・内記・監物けんもつ・主鈴などの職員がいた。なかのまつりごとのつかさ。なかのつかさ。

ちゅうむ‐しょう〔‐シヤウ〕【中務省】

なかつかさしょう

なか‐の‐つかさ【中省】

なかつかさしょう

なかのまつりごと‐の‐つかさ【中省】

なかつかさしょう

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改訂新版 世界大百科事典 「中務省」の意味・わかりやすい解説

中務省 (なかつかさしょう)

令制で太政官の下で国務を分掌する八省の一つ。天皇に侍従し,詔勅の文案の審署,上表の受納,国史の監修,女官の名帳・考叙・位記,諸国戸籍・租調帳,僧尼の名籍をつかさどる。総じていえば天皇の秘書の官で,唐の中書省に近似するが,地位はそれほど高くない。職員は卿,大輔・少輔,大丞・少丞,大録・少録の四等官のほか,侍従内記(大中少),監物(けんもつ)(大中少),主鈴(しゆれい)(大少),典鑰(てんやく)(大少)や史生,内舎人,使部,直丁などが所属し,八省中最大の規模を持つ。したがって長官・次官たる卿・輔の相当位も他の7省より各1階高いとされる。その起源は飛鳥浄御原令にあると推定されるが,詔勅の起草に当たるところからしだいに権威を高め,その地位も向上した。しかし藤原氏の政界制覇とともにその重要性も薄れ,平安朝以降はもっぱら親王をもって任ずる名誉職となり,人臣を任ずることはまれであった。

 省のもとに中宮職,左右大舎人(おおとねり)寮図書(ずしよ)寮内蔵(くら)寮縫殿(ぬいどの)寮陰陽(おんみよう)寮と,画工,内薬,内礼の3司があった。
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百科事典マイペディア 「中務省」の意味・わかりやすい解説

中務省【なかつかさしょう】

律令制下の八省(はっしょう)の一つ。詔勅(しょうちょく)・上奏など天皇側近の事務を担当。中宮職(ちゅうぐうしき)のほか6寮3司を管轄。飛鳥浄御原令(あすかきよみはらりょう)に〈中官〉とあるのがその起源とみられ,大宝令(たいほうりょう)で改称。長官の卿(きょう)の格は他の7省より高かったが,実権はあまりなかった。→大宝律令
→関連項目大舎人寮内蔵寮内匠寮典薬寮縫殿寮

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「中務省」の意味・わかりやすい解説

中務省
なかつかさしょう

令(りょう)制に規定された中央官司。太政官(だいじょうかん)に属した八省の一つで、中宮職(ちゅうぐうしき)および左右舎人(とねり)・図書(ずしょ)・内蔵(くら)・縫殿(ぬいどの)・陰陽(おんみょう)の6寮、画工(えたくみ)・内薬(うちのくすり)・内礼(ないらい)の3司を管した。天皇の国事行為や後宮(こうきゅう)関係の政務に携わり、とくに詔書・勅旨の作成に関し、天皇の意を受けて起案し、覆奏して施行許可をとり、卿(かみ)・大少輔(だいしょうすけ)が署名のうえ、太政官に送る要務にあたった。浄御原令(きよみはらりょう)では中官(なかのつかさ)とよんだらしい。侍従、内舎人(うどねり)、内記、監物(けんもつ)などの官人を擁して、天皇印、鍵(かぎ)、駅鈴、伝符や戸籍を管理した。天皇に近侍し、卿、輔の官位相当は、他省より一階高かったが、平安初期以後、卿に親王を任ずるようになった。奈良中期、一時信部省(しんぶしょう)と改称した。

[八木 充]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「中務省」の解説

中務省
なかつかさしょう

大宝・養老令制の官司。八省の一つ。天皇への近侍,勅命の起草および外部への伝達,臣下の上表の天皇への伝達,国史の編纂の監修,天皇に仕える女官の統轄などがおもな職掌。品官(ほんかん)には侍従・内舎人(うどねり)・内記・監物(けんもつ)・主鈴・典鑰(てんやく)などがあり,天皇の側近としての職務を担った。中宮職・図書(ずしょ)寮・内蔵(くら)寮・縫殿(ぬいどの)寮・陰陽(おんみょう)寮・画工司・内薬司・内礼司など多くの諸司を被管にもつ。大宝令以前に前身官司として中官があったとする説もあるが,浄御原令(きよみはらりょう)制にはなかった可能性が高く,品官や被管官司も独立して存在した。大宝・養老令制では官員の官位相当が高く,他の7省より上格だったが,実質的な職務は少なく,名誉職的であった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「中務省」の意味・わかりやすい解説

中務省
なかつかさしょう

令制における太政官八省の一つ。禁中の庶務をとる役所。天皇に近侍して,詔勅,宣下 (せんげ) ,叙位のことなどを司った。長官である中務卿には四位以上の親王が任じられ,その下に輔,丞,録の四等官以下がおかれた。ほかに天皇近侍の侍従がいた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「中務省」の解説

中務省
なかつかさしょう

律令官制の八省の一つ
太政官の左弁官に属し,天皇に侍従し,詔勅・上表・国史・天文・暦・女官の人事・考叙・位記・諸国の戸籍・租調帳・僧尼の名簿などをつかさどった。管轄下に中宮職のほか左右大舎人・図書・内蔵・縫殿・陰陽の6寮と画工・内薬・内礼の3司があった。

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世界大百科事典(旧版)内の中務省の言及

【二官八省】より

…日本古代の律令制の官庁組織をいう語。狭義には太政官(だいじようかん),神祇官(じんぎかん)の二官と中務(なかつかさ)省式部(しきぶ)省治部(じぶ)省民部(みんぶ)省兵部(ひようぶ)省刑部(ぎようぶ)省大蔵(おおくら)省宮内(くない)省の八省を指すが,広義には,この二官・八省に統轄される八省被管の職・寮・司や弾正台(だんじようだい),衛府(えふ)などの中央官庁および大宰府(だざいふ)や諸国などの地方官庁を含む律令制の全官庁組織の総体をいい,ふつうは後者の意味で用いる。このような官庁組織は,7世紀後半から8世紀初めにかけて形成された。…

※「中務省」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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