匂袋(読み)においぶくろ

精選版 日本国語大辞典 「匂袋」の意味・読み・例文・類語

におい‐ぶくろにほひ‥【匂袋】

  1. 匂袋〈女用訓蒙図彙〉
    匂袋〈女用訓蒙図彙〉
  2. 〘 名詞 〙 沈香(じんこう)丁字(ちょうじ)白檀(びゃくだん)麝香(じゃこう)龍脳など種々の香の細末を入れて、身につけたり、物にかけておいたりする小さな袋。掛香(かけごう)。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「昔は帯、たんざく、匂ひぶくろ、みづひきをば、やないばこにすへ候」(出典:めのとのさうし(14C中か))

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改訂新版 世界大百科事典 「匂袋」の意味・わかりやすい解説

匂袋 (においぶくろ)

平安時代,宮廷人の身だしなみとして,空薫(そらだき)やえび香などの習慣が広まったが,香料を袋などに入れて現代の香水のように身につけたり,室内に掛けて邪鬼を払う薬玉(くすだま)として使った。これが香囊(においぶくろ)で,掛香ともいう。袋物としても燧袋(ひうちぶくろ)とともに長い歴史を持ち,正倉院御物に小香袋が7口現存している。江戸時代になると,匂袋は一般化し,浮世袋,花袋,誰袖(たがそで)などの名で親しまれ,蚊帳に掛けたり,花街ではのれんにつける習いがあったが,しだいに懐中して使う形に変化した。香料はおもに丁字(ちようじ),麝香(じやこう),竜脳(りゆうのう)などが使われ,いろいろな調合法があった。明治以降,匂袋をたしなむ人は少なくなったが,現在でも携帯用や訶梨勒(かりろく)型のような装飾を施したものが販売されている。西洋では,花や香草,香料を乾燥させたポプリpot-pourriなどを詰めた匂袋をサシェsachetと呼び,起源はギリシア時代にさかのぼるといわれている。日本でもこの類の商品が出回ってきた。
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百科事典マイペディア 「匂袋」の意味・わかりやすい解説

匂袋【においぶくろ】

香料(麝香(じゃこう)・丁子(ちょうじ)・白檀(びゃくだん)など)を入れた布製の小袋。身だしなみに携帯したり,たんすの中に入れておく。仏教伝来とともに日本へ伝わり,平安時代宮廷人の間に広まった。江戸時代には一般化。西洋ではサシェsachetと呼ぶ。

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世界大百科事典(旧版)内の匂袋の言及

【香】より

…趣味,実用にも用いられ,正倉院にもあるえび香は沈香,白檀,丁香,麝香,甘松等を砕粉調合したものであるが,薫衣,防虫に用いられ,薫衣香ともいう。調合した香を袋に入れ,柱に掛けて装飾をも兼ねれば掛香,薬玉(くすだま),訶梨勒(かりろく)となり,懐中にすれば匂袋である。翫香は実用性を脱して趣味性,審美性に徹したもので一木の沈香木を心ゆくまで賞翫する一炷(いつちゆう)聞,文学的美意識と結合した組香による聞香(もんこう)を生み出し,日本独自の佳薫の芸道を成立させた。…

※「匂袋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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