沈香(読み)ジンコウ(その他表記)aloeswood
agalwood

デジタル大辞泉 「沈香」の意味・読み・例文・類語

じん‐こう〔ヂンカウ〕【沈香】

ジンチョウゲ科の常緑高木。熱帯地方に産する。葉は楕円形。花は白く、香りがある。
1からとった香料生木または古木土中に埋め、腐敗させて製したもの。最優品を伽羅きゃらという。沈水香じん

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精選版 日本国語大辞典 「沈香」の意味・読み・例文・類語

じん‐こうヂンカウ【沈香】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ジンチョウゲ科の常緑高木。インドから東南アジアに分布する。幹は高さ二〇メートルにも達する。葉は長さ五~七センチメートルの長楕円(だえん)形で先は尾状にとがる。花は先が深裂した鐘形で白色。果実は長さ約五センチメートルの楕円状で、熟すと二裂する。材は香木として珍重され、インドでは薬用にもする。じん。〔十巻本和名抄(934頃)〕
  3. から採取した天然香料。樹幹に真菌が侵入し、その菌糸に対抗して分泌された成分が香料となる。特に光沢のある黒色の優良品を伽羅(きゃら)という。
    1. [初出の実例]「合沉香伍拾玖斤壱拾伍両」(出典:大安寺伽藍縁起并流記資財帳‐天平一九年(747))
    2. [その他の文献]〔晉書‐王敦伝〕

じん‐こヂン‥【沈香】

  1. 〘 名詞 〙 「じんこう(沈香)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「『腎居寺でたく、そりゃ沈香(ヂンコ)』『沈香(ヂンコ)は金山ふもと、そりゃ金海鼠(きんこ)』」(出典滑稽本浮世風呂(1809‐13)四)

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改訂新版 世界大百科事典 「沈香」の意味・わかりやすい解説

沈香 (じんこう)
aloeswood
agalwood

熱帯産のジンチョウゲ科の樹木からとる香木。これらの樹木の材が土中に埋まり,樹脂が浸出し,長期間を経て香木の状態になったものを,時代や品質によって沈香,伽羅(きやら)などと呼ぶ。良質のものは比重が大きく,水に沈むので,沈香という名が生じた。沈香の原料植物は,いくつかの種類があり,必ずしも特定できないが,有名なものは,とくにジンコウの名があたえられているAquilaria agallocha Roxb.で,高さ約30mの常緑高木になる。インド,マレー地方,中国南部などに自生し,また栽培して,幹に人工的に傷をつけ,土中に埋めて沈香をとる。同属のA. Sinensis (Lour.) Gilg.も同じように香木にされることがある。またジンチョウゲ科のGonystylus属やトウダイグサ科Excoecaria属の材にも沈香の名がつけられることがあるという。沈香は,ベンジルアセトン,高級アルコール,テルペンなどからなる樹脂を約50%含む。燃やすと特有の芳香を発し,仏教をはじめとする宗教儀式に用いられ,また日本の香道の主役とされる。東大寺正倉院御物の蘭奢待(らんじやたい)は名木として著名である。薬用としては喘息,嘔吐,腹痛,腰やひざの冷えなどに用い。鎮静や疲労回復の効があるとされる。
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百科事典マイペディア 「沈香」の意味・わかりやすい解説

沈香【じんこう】

香木の一種。インド,東南アジアに分布するジンチョウゲ科の常緑高木,および材が長期間土中に埋もれ,樹脂が浸出して香木となったものをいう。香木は黒褐色で光沢に富み,堅く比重の大きいものほど良品とされ,特に優良なものを伽羅(きゃら)と呼ぶ。そのままでは香気は弱いが,火にくべると強い芳香を放つ。古来薫香(くんこう)として賞用。
→関連項目アロマセラピー奇応丸香木

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普及版 字通 「沈香」の読み・字形・画数・意味

【沈香】じんこう

香木の名。

字通「沈」の項目を見る

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動植物名よみかた辞典 普及版 「沈香」の解説

沈香 (ジンコウ)

学名:Aquilaria agallocha
植物。ジンチョウゲ科の常緑高木,薬用植物

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世界大百科事典(旧版)内の沈香の言及

【ジンチョウゲ(沈丁花)】より

…しかし,植物体各部に有毒成分を含むものがあり,液果を食べると中毒死を,また樹液は皮膚にかぶれを起こす。東南アジア産で,香の貴重な材料となるジンコウ(沈香)もこの科に含められる。【浜谷 稔夫】。…

※「沈香」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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