改訂新版 世界大百科事典 「包装食品」の意味・わかりやすい解説
包装食品 (ほうそうしょくひん)
包装材料や容器で包装された食品のことをいうが,一般的には,販売する直前に食品を包装する場合は包装食品とはいわず,工場や生産地などであらかじめ包装された食品を包装食品といっている。包装は,食品の品質保全,衛生状態の保持,取扱いの簡便さ,商品性の向上などの目的で行われ,包装資材としては木,竹,紙などで作られた容器,つぼ,ガラス瓶,金属缶,プラスチック容器,紙,布,プラスチックフィルムなど多様なものが用いられている。広義には,これらの包装資材で包装された食品はすべて包装食品であるといえるが,狭義には,プラスチックあるいはプラスチックを主体とした包装材料で個装した食品のみを包装食品ということがある。
包装食品は,大きく生鮮食品と加工食品に分けられる(表参照)。精肉,魚介類,野菜などの生鮮食品は,プラスチックフィルム,あるいはトレーとプラスチックフィルムで包装されているものが多い。米,麦,豆などは厚手のポリエチレンや紙袋で包装されている。加工食品では,食品の形状,性質,処理加工条件などによって種々の包装形態がとられ,包装材料も多様である。しょうゆ,ソース,食酢,食用油,酒類などの液状食品では金属缶,ガラス瓶,プラスチックボトルなどに入ったものが多いが,一部の液状食品では紙容器も使われている。ケチャップ,マヨネーズ,ジャムなどの半流動性食品は,使いやすいように広口のガラス瓶やプラスチックチューブが主体となっている。スナック食品,粉末食品,茶,ノリなどの水分の少ない乾燥食品は,吸湿を防ぐため水分を通さない金属缶,ガラス瓶,アルミ箔を芯層にしたプラスチック積層フィルム,水分透過性の少ないプラスチックフィルムなどが用いられる。農産加工品,畜産加工品,水産加工品の中で,加熱殺菌によって品質保持期間を延長するものは,加熱に耐える金属缶,ガラス瓶,耐熱性プラスチックフィルムなどが用いられる。
食品包装の進歩によって新しい包装食品が数多く生まれている。食品を急速凍結し,-18℃以下の低温下で貯蔵,流通させる冷凍食品は,低温強度の強いプラスチックフィルムなどが用いられる。カレーやハンバーグなどの食品をアルミ箔,ポリエステルなどの耐熱性の包装材料で包装し,120℃以上の温度で殺菌をするレトルト食品は,缶詰のように常温で長期間の保存ができる。食品を高温で滅菌してから無菌の包装材料で包装する無菌包装食品も常温で長期間の保存ができるので,これから発展が期待されている包装食品の一つである。食品の変質をおさえるため,包装容器内を窒素や炭酸ガスで置き換える不活性ガス置換包装や,包装容器内の酸素を除去する真空包装,脱酸素剤封入包装なども広く用いられている。なお,〈包装〉の項を参照されたい。
執筆者:石谷 孝佑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報