改訂新版 世界大百科事典 「化学加工」の意味・わかりやすい解説
化学加工 (かがくかこう)
chemical machining
被加工物の表面の一部を防食膜で覆い,露出した部分を溶解して目的の形状に成形する加工法。表面の平滑化と光沢の付与を目的とした化学研磨と原理は同じである。薄板からの部品の加工,プリント配線,航空機部品などの複雑な三次元形状部品の加工に利用されている。腐食液としては各種の酸やアルカリ溶液が用いられるが,その選択は被加工物の材質,加工後の表面状態,使用する防食膜の種類などによって決定される。一般に用いられる防食膜は,ビニル系,ネオプレン系,ブチル系のものが多い。防食膜を目的の形状に被覆する手段としては,被加工物全面に塗布後,腐食液にさらす部分を精度よく切り取る方法が代表的である。化学加工は,その加工精度はあまり高くないが,切削や研削による加工が困難な材質の加工や,きわめて複雑な形状の部品の加工にも適用できるほか,加工費用の低減が図れる。
執筆者:稲崎 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報