日本大百科全書(ニッポニカ) 「プリント配線」の意味・わかりやすい解説
プリント配線
ぷりんとはいせん
printed wiring
樹脂、セラミックスなどの平板基板上に導電性をもつ配線図形を印刷手法で多量につくり、電子回路を形成したもの。印刷配線ともいう。基板上の所定の位置にデバイスを取り付けるだけで回路が構成できるので誤配線のおそれがなく、回路をコンパクトにまとめることができる。
プリント配線は電子回路を小型化したいという要求から生まれたもので、第二次世界大戦ごろまではガラス、セラミックス上に銀のペイントを塗布したり、カーボンを印刷焼付けしたものを使用した。現在もっとも広く用いられている銅張り積層方式は1942年のイギリスの特許で、第二次大戦中軍用に多く用いられた。その後47年には、耐酸性インキで回路を印刷し、余分の箇所をエッチングで取り除く方式がアメリカで特許出願され、自動車用計器など民生用にも普及することとなった。日本では1955年(昭和30)からトランジスタラジオの出現とともに使われだし、小型、軽量で量産性がよいため広く普及している。
プリント配線用の基板材料は、エポキシ、フェノールなどの熱硬化樹脂、紙、ガラス布などを組み合わせたものとかセラミックスなどであるが、可撓(かとう)性を要求されるものにはポリイミド樹脂を用いる。
配線方法には、銅箔(はく)を接着剤で全面に張り付け、配線部分を残して化学エッチングで取り去る食刻法のほか、絶縁板上に配線部分だけを無電食めっきするめっき法、導電性塗料を印刷塗布して配線を固定する印刷法、配線パターンに切った銅箔を加熱して絶縁板に押し込む圧(おし)込み法などがある。
プリント配線はその形により、片面、両面のものと、多層配線用のものがあるが、半導体集積回路用として多層セラミックスプリント板もつくられている。プリント配線板にほかの素子とか部品を接続するにはディップ法あるいはソルダリング法が用いられ、数百、数千の接続を数秒で行わせることができる。また、部品の自動挿入や組立て後の自動検査も容易となる。
[岩田倫典]
『喜田村善一著『電子・通信部品』(1965・コロナ社)』