改訂新版 世界大百科事典 「化学研磨」の意味・わかりやすい解説
化学研磨 (かがくけんま)
chemical polishing
金属表面処理の素地調整のための工程には,(1)研削(形をととのえる),(2)清浄(脱脂など表面よごれの除去),(3)研磨(表面の平滑化,光沢化)の3段の工程があるが,化学薬品を用いるものには,それぞれ,(1)エッチング(ケミカルミーリング),(2)酸洗,(3)化学研磨および電解研磨と呼ばれるものがある。化学研磨はおもに表面の光沢化を目的として用いられる。被研磨材料を仕上げ目的に合わせた化学研磨液中に数秒ないし数分浸漬したのち,水洗,中和して仕上げる。研磨液は,酸(硫酸,リン酸,フッ酸等),酸化剤(クロム酸,硝酸,過酸化水素等),助剤(ガス発生の抑制,光沢化付与等)の3者を混合したもので,種々の処方が知られている。歴史的には,銅合金に用いられたキリンス浴(硝酸,硫酸,塩酸の混合浴。のちに一酸化窒素ガスの発生を抑える助剤として尿素添加の改良がなされた)が有名である。アルミニウム合金にはリン酸+硝酸,炭素鋼にはシュウ酸+過酸化水素,ステンレス鋼にはリン酸+塩酸+硝酸といった浴が用いられている。化学研磨の特徴は操作が簡単で大量処理ができることであり,自動化学研磨技術も生まれているが,一方,浴の管理が難しい欠点がある。処理液の無公害化処理,重金属回収などの技術の進歩は著しい。
執筆者:増子 昇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報