化学特異星(読み)カガクトクイセイ(その他表記)chemically peculiar star

日本大百科全書(ニッポニカ) 「化学特異星」の意味・わかりやすい解説

化学特異星
かがくとくいせい
chemically peculiar star

スペクトル型A型星を中心にそのスペクトルに異常を示す星。その異常性は、特定の元素組成が過剰であったり、強い磁場を示すことであったりする。これらの星は、一般に光の放射圧による拡散過程と磁場の組み合わせにより説明されることが多く、化学特異星(CP星)とよばれている。それらのスペクトルの特徴に基づき、プレストンGeorge PrestonによってCP1(金属線星、Am)、CP2(A型特異星、Ap)、CP3(水銀マンガン星、HgMn)、CP4(弱ヘリウム星、He-weak)の四つに分類された。

 CP1星は、カルシウムあるいはスカンジウムが弱いが、重金属線が強い。自転速度は小さく有効温度は7000から10000Kに分布する。CP2(Ap星)は、強い磁場が特徴でケイ素、クロムストロンチウムユウロピウムの組成が過多である。やはり自転速度は遅く有効温度は7000から14000Kに分布する。この星は磁変星(magnetic variable)ともよばれ、恒星面が数百ガウスから数万ガウスの磁場に覆われている。そのほとんどの磁場強度が数時間から数年の尺度で時間変化を示すのでこの名がある。1946年にヘール天文台バブコックゼーマン効果を利用したスペクトル線観測で発見した。磁場の磁極自転軸の極がずれた斜回転星モデルにより、スペクトル線の強度や磁場の強度の変動がよく説明されている。代表的なものにりょうけん座α(アルファ)2星がある。CP3は、古くはCP2と同じ分類であったが、強い磁場を示さず、スペクトルも時間変化を示さない。名前のように水銀とマンガンの吸収線が強い。自転速度はさらに小さく、有効温度は10000から14000Kに分布する。CP4は、同じスペクトル型の星に比べてヘリウム線が弱い星である。

[小平桂一・安藤裕康]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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