ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説
北京オリンピック冬季競技大会
ペキンオリンピックとうききょうぎたいかい
参加選手は 91の国・地域から約 2900人。このうち国ぐるみのドーピング(禁止薬物使用)が疑われたロシアは,違反歴のない選手にかぎりロシア・オリンピック委員会 ROCとして個人資格での参加が認められた。北京中心部および郊外のイエンチン(延慶),河北省のチャンチヤコウ(張家口)の 3ヵ所を会場に,7競技 109種目が実施された。新種目にはボブスレー女子1人乗り,フリースタイルスキーの男女ビッグエアおよびエアリアル混合団体,スノーボードクロス混合団体,ショートトラックスピードスケート混合リレー,スキージャンプ混合団体が採用された。これにより女子選手の参加が増え,その割合は 45.44%とジェンダー平等の観点から目指してきた 50%に近づいた。
国別金メダル獲得数の首位はノルウェー(16個)で,メダル総数でも 1位(37個)だった。2位はドイツ(12個)で,3位は開催国の中国(9個),4位はアメリカ合衆国,スウェーデン,オランダ(8個)。メダル総数では 2位が ROC(32個),3位はドイツ(27個)。日本は 124選手を派遣し,金 3個,銀 6個,銅 9個を獲得,メダル総数 18個は過去最多となった。注目を集めた選手として,アメリカで生まれ育ち,2019年に中国国籍を取得したフリースタイルスキーの谷愛凌(アイリーン・グー)がハーフパイプ,ビッグエアの 2種目を制し,スロープスタイルでも銀メダルに輝いた。モデルもこなすことなどから中国国内で人気を博したが,中国で認められていない二重国籍の疑惑がつきまとった。スノーボード女子パラレル大回転のエステル・レデツカは 2連覇を果たしたが,アルペンスキーのスーパー大回転では 5位に終わり,前回平昌大会に続くアルペンスキー,スノーボードの 1大会 2競技制覇はならなかった。フィギュアスケート男子シングルで 3連覇が期待された羽生結弦はフリーで 4回転アクセルジャンプ(4回転半ジャンプ)に挑んだものの転倒,さらにショートプログラムでのジャンプ失敗が影響し,4位に終わった。しかし,アスリートとしての言動や競技に挑む姿勢に世界から賞賛の声が寄せられた。2大会連続銀メダルのスノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢は最高難度の大技「トリプルコーク1440(フォーティーン・フォーティ)」を決め,悲願の金メダルを獲得,ライバルで 3大会金メダルの第一人者ショーン・ホワイトは 4位に入り,今大会を最後に現役を引退した。スピードスケート女子の高木美帆は 1000mで自身初の個人種目金メダルに輝き,500m,1500m,団体追い抜きでも銀メダルを獲得した。ジャンプ男子の小林陵侑は個人ノーマルヒルで金メダル,個人ラージヒルでも銀メダルを奪った。人気のカーリング女子日本チーム,ロコ・ソラーレは決勝でイギリスに敗れたものの,前回 3位から順位を上げて銀メダルを獲得した。
フィギュアスケート女子シングルで優勝候補だった ROCの選手の大会出場が物議をかもした。2021年末のドーピング検査で同選手の検体から禁止薬物トリメタジジンが検出され,ロシア反ドーピング機関 RUSWADAにより暫定出場停止になったものの選手側の異議申し立てが認められ,オリンピック出場が認められた。決定を不服として国際オリンピック委員会 IOC,世界反ドーピング機関 WADA,国際スケート連盟 ISUがスポーツ仲裁裁判所 CASに訴えたが,選手が 15歳と「保護対象者」であることなどを理由に退けられた。選手は団体で ROCの金メダル獲得に貢献したものの,個人戦ではフリーのミスが響き,4位(暫定順位)に沈んだ。そのほか,ジャンプ混合団体で抜き打ちの計測検査により 4ヵ国 5人の女子選手がスーツ規定違反で失格となる騒動が起こった。
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