ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説
東京オリンピック競技大会
とうきょうオリンピックきょうぎたいかい
参加選手は 205の国・地域および難民選手団 EORの約 1万1000人。このうち国ぐるみでのドーピング(禁止薬物使用)が疑われたロシアは,違反歴や疑惑のない選手にかぎりロシア・オリンピック委員会 ROCとして個人資格での参加が認められた。新競技に野球・ソフトボール(2008年北京大会以来 3大会ぶり復活),空手,スケートボード,スポーツクライミング(→フリークライミング),サーフィン(→サーフライディング),新種目に卓球混合ダブルス,柔道混合団体,3x3バスケットボールなどが加わり,史上最多の 33競技 339種目が首都圏(マラソンは北海道札幌市)を中心とする全 42会場で実施された。またジェンダー平等の観点から女子選手の参加割合を 50%に増やすことを目標に,これまで男子のみだった種目に女子種目が追加されたり,男女混合種目が新たに採用されたりした。
国別金メダル獲得数の首位はアメリカ合衆国(39個)で,メダル総数でも 1位(113個)だった。2位は中国(38個)で,メダル総数も同じく 2位(88個)。3位は日本で,583選手を派遣し,過去最多となる金メダル 27個を獲得,同じく過去最多となったメダル総数で 5位(58個)につけた。個人では競泳男子のケーレブ・ドレセル(アメリカ合衆国)が,100mバタフライで世界新記録を更新するなどリレー 2種目を含め五冠を達成。また競泳女子のエマ・マキーオン(オーストラリア)は金メダル 4個,銅メダル 3個の計 7個のメダルを手にした。
日本選手は過去大会に実績のある柔道とレスリングでそれぞれ 9個,5個と金メダルを量産し,新競技のスケートボードでは男女 4種目中 3種目を制した。個人では,競泳女子の大橋悠依が個人メドレー 2種目で,体操男子の橋本大輝が個人総合,種目別鉄棒の 2種目で金メダルを獲得した。卓球の新種目混合ダブルスでは伊藤美誠と水谷隼が金メダルを奪い,中国の牙城を切り崩した。スケートボード女子ストリートの西矢椛(にしやもみじ)は 13歳330日と,日本史上最年少の金メダリストになった。団体では野球とソフトボール,フェンシング男子エペ団体で金メダル。また決勝でアメリカに敗れたものの,バスケットボール女子の日本チームの戦いぶりが大会終盤を盛り上げた。
前回大会に続く活躍が期待されていた体操女子のシモーン・バイルズ(アメリカ合衆国)が,自身のメンタルヘルスの問題を理由に団体総合決勝を途中棄権,その決断に支持や共感が集まった。性的マイノリティ(→LGBT)を公表する選手の数が前回大会の約 3倍となる 180人あまりに達し,トランスジェンダーのウエイトリフティング選手が,性自認する女子の種目に初めて出場した。人種,宗教,性的少数者などの多様性を認め差別に反対する世界的潮流のなか,選手が競技開始前に地面に片膝をついたり,表彰台の上で握りこぶしを高く掲げるポーズをとったりするなど,抗議の意思を示す象徴的行為も認められた。
新型コロナウイルスに感染したオリンピック関係者(選手・選手団役員,メディア関係者,委託業者,ボランティアなど)は 547人となり,選手村でのクラスター(感染者集団)発生は大会終盤の 1件にとどまった。女性蔑視発言や過去の差別的言動などを取りざたされた大会関係者の相次ぐ解任・辞任,直前に無観客が決まったことによる物品の大量廃棄,猛暑による試合直前の予定変更など混乱もいくつかみられたが,大会運営全般に重大な支障をきたす問題は起こらなかった。一方で,テレビ観戦が中心となり,オリンピックを最高の大会と位置づける競技者のパフォーマンスを直接見る機会や,海外選手の日本国内での事前合宿および関連イベントが軒並み中止となり,市民との交流の場が失われるなど,スポーツの祭典ならではのにぎわいや楽しさがそこなわれる異例の大会となった。
東京オリンピック競技大会
とうきょうオリンピックきょうぎたいかい
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