スポーツ仲裁裁判所(読み)すぽーつちゅうさいさいばんしょ(英語表記)Court of Arbitration for Sport

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スポーツ仲裁裁判所」の意味・わかりやすい解説

スポーツ仲裁裁判所
すぽーつちゅうさいさいばんしょ
Court of Arbitration for Sport

スポーツにかかわる紛争を解決する国際機関。ドーピング、国際大会への出場資格、競技結果の判定、チーム移籍の問題などに関連するトラブルや紛争を、スポーツ界の枠組みのなかで解決するために仲裁を行う。略称CAS(キャス)。スポーツ仲裁国際理事会(ICAS:The International Council of Arbitration for Sport)によって運営される一審制の第三者機関である。本部スイスローザンヌにある。CASには87か国、およそ300人のスポーツに詳しい法律専門家などが仲裁人として登録され、年間約300件の事案を取り扱っている。1980年代以降、スポーツに関した国際的な争いや、拘束力のある決定を必要とする問題が急速に増加したため、国際オリンピック委員会(IOC)によって1984年に組織され、1994年にIOCから独立した。

 これまで日本のスポーツ選手提訴したケースはあまり多くはないが、以下のような事例がある。2000年に行われたオリンピック・シドニー大会で、女子競泳の有力選手が日本代表として選出されなかった問題では、CASは選手側の訴えを認めなかったものの、日本水泳連盟に対して選考基準の不明瞭(ふめいりょう)さを問題点として指摘し、訴訟費用の一部負担を命じた。また、サッカーJリーグの選手がドーピング禁止規定違反処分に対して提訴した際には、2008年(平成20)に選手側の主張を認める判断を下した。さらに、2012年に陸上男子ハンマー投げの選手が違反をしたとしてIOC選手委員選挙での当選を無効とされた問題で、CASは選手と日本オリンピック委員会の提訴を退けたものの、選手の関与はなかったとする裁定を公表したことが話題になった。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スポーツ仲裁裁判所」の意味・わかりやすい解説

スポーツ仲裁裁判所
スポーツちゅうさいさいばんしょ
Court of Arbitration for Sport; CAS

スポーツにかかわる紛争を解決するための独立機関。本部はスイスのローザンヌ。スポーツ組織や競技大会の運営,選手の権利などに詳しい弁護士,判事など法律の専門家で構成する。ドーピング (禁止薬物使用) による処分やオリンピック競技大会への代表選考に関する決定などで,選手が一般法廷に不服申し立てをする事例が増えたため,国際オリンピック委員会 IOCは迅速な裁定ができるよう 1983年にスポーツ仲裁裁判所 CASを設立,翌 1984年に活動を開始した。 1993年これを管理運営する国際スポーツ仲裁評議会 ICASがつくられ,CASは IOCから完全に独立した機関となった。選手側が IOCや国際競技連盟 IF,あるいは国内オリンピック委員会 NOCを訴える事例が多い。被申立人が受理することが審理の条件で,上訴のできない一審制をとっている。オリンピック競技大会期間中は複数の仲裁人が開催都市に待機し,仲裁申し立てが出てから原則 48時間以内に裁定を出す手続きが確立されている。

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