半波電位(読み)ハンハデンイ

化学辞典 第2版 「半波電位」の解説

半波電位
ハンハデンイ
half-wave potential

直流ポーラログラフ電流-電位曲線(直流ポーラログラフ波あるいは直流ポーラログラムともいう)において,限界電流値の半分の電流値に対応する電位.通常 E1/2 で表す.

O + ne R
(O,Rは電極反応に関与する酸化型および還元型の物質で,nは電子数)で表される電極反応の可逆波の半波電位は次式で与えられる.

ここで,E °は電極反応の標準電極電位γO および γR はそれぞれOおよびRの活量係数,DO および DR はOおよびRの拡散係数(正確にはトレーサー拡散係数),Rは気体定数,Tは絶対温度Fファラデー定数である.通常は γOγR および DODR であるので,可逆波の半波電位は標準電極電位にほとんど等しい値をもつ.非可逆波の場合には,その半波電位は還元波について書くと次のように表される.

ここで,k°は電極反応の標準速度定数,αは移動係数,τは滴下時間である.したがって非可逆波の半波電位はk°の値が小さくなるにつれて卑の電位へずれる.上記の2式より明らかなように,半波電位は温度によってわずかに変化し,また,溶液イオン強度支持電解質種類によって変化するので,正確な半波電位の値の測定には,温度,支持電解質の種類と濃度を規定しなければならない.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「半波電位」の意味・わかりやすい解説

半波電位
はんぱでんい
heat-wave potential

ポーラログラム上で被電解物質により生じた波高の半分に相当する電流が流れるときの電解電位をいう。ポーラログラフィーでは水銀だめから毛細管を通って被験液中に水銀が滴下し、この水銀の表面対極(大きな面積の水銀プールが多く使われる)との間に電解を行わせる。電解電位を時間とともに直線的にあげて流れる電流を記録したものがポーラログラムである。半波電位E1/2は、一定の支持電解質溶液中で電解するときには、被電解物質に特有の値になるから、半波電位の値を観測すれば定性分析を行うことができる。

[戸田源治郎]


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