家庭医学館 「単純性腎嚢胞」の解説
たんじゅんせいじんのうほう【単純性腎嚢胞 Simple Cyst of the Kidney】
腎臓(じんぞう)の組織(腎実質(じんじっしつ))内に、液体のつまった小さな袋(嚢胞(のうほう))ができている状態をいいます。ふつう、嚢胞は片方の腎臓に1個または2~3個ありますが、両側の腎臓に多数あることもあります。
嚢胞は少しずつ大きくなりますが、圧迫による腎実質への影響はほとんどなく、腎不全(じんふぜん)にはなりません。
生まれつきのものと考えられていますが、遺伝性はありません。
[症状]
大きな嚢胞は、まわりを圧迫することによって、軽い胃腸症状をおこすこともあります。しかし、多くの場合、症状はありません。
[検査と診断]
症状がないことが多いので、ほかの病気で、腹部の超音波検査やCTスキャンをしていて発見されることが多くなっています。
静脈性腎盂撮影(じょうみゃくせいじんうさつえい)などの検査で腎臓の腫瘤(しゅりゅう)が疑われたときは、嚢胞か悪性腫瘍(あくせいしゅよう)か、みきわめることが必要です。
そのために、腎臓のCTスキャン、MRI、血管造影などが行なわれます。
[治療]
嚢胞が大きくなって、まわりの臓器を圧迫している症状があったり、嚢胞か、がんか診断がはっきりしない場合には、治療をします。
超音波検査の画像で、嚢胞をみながら、背中から細い針を刺し、特殊な管(カテーテル)を入れ、嚢胞内の液体を抜き、かわりに無水エタノールを注入して、再び回収する方法が行なわれています。
一過性の顔面紅潮(がんめんこうちょう)、針を刺したところの痛み、発熱などがみられることがありますが、いずれも軽度です。
針を刺して液体を抜くだけでは、すぐ再発してしまいます。また、液が透明でなかったら、液の詳しい検査(細胞診(さいぼうしん)など)が必要で、その結果によっては手術になることもあります。