きわめて伝統的な生活をおくる民族の間にある全知全能の至上者に対する一神教的な観念。神の観念の起源およびその発展過程については,霊魂観念→精霊崇拝→多神教→一神教へと漸進的に発展したとする E.B.タイラーのアニミズム説が支配的であったが,19世紀末になって A.ラングが,最も「文明」に影響されていない民族の間に「全父」 all fatherの観念が認められるとして,これに疑問を投げた。これを受けて W.シュミットは,採集経済の段階にある諸民族を原文化 Urkulturに属する民族とし,彼らの間には至上神の観念が明確に認められるのに対して,霊魂観念その他の宗教形態は認められず,呪術も行われていないことを実証し,これは原始一神教とも呼ぶべき宗教形態であると主張した。シュミットによれば,神の観念の起源は創造神にして全知全能である至上神にあり,原始社会における宗教は一神教であったが,以後人間の堕落とともに精霊信仰や多神教が起り,ようやく理性を取戻した人間によって再び至上神への信仰が回復しつつあると説いた。ただし今日ではその説に対しては疑問が多く,これらの事例は高神 high god信仰とした方がよいとされる。