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原始主義 げんししゅぎprimitivism

翻訳|primitivism

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

原始主義
げんししゅぎ
primitivism

自然ないし自然的なものを人間的価値の規準とする立場。歴史を原初の最良の状態からの下降とみなす年代的原始主義と,単純素朴な生活への復帰に救いを見出す文化的原始主義が区別される。自然をどう理解するかによってさらに種々の形態が可能であるが,主として前者は史的発展,人為的なものに,後者は法や理性的精神活動などに対立するものとして自然をみる。西欧での最初のものはヘシオドスにみられる年代的原始主義で,エンペドクレス,ルクレチウスなどに受継がれた。文化的原始主義はキュニコス派に始り,ローマのストア派に受継がれ,L.セネカを介して影響を及ぼした。ユダヤ思想,キリスト教思想においてはエデンの園の解釈に原始主義の系譜がみられる。教父たちはおおむね歴史を人間の堕落の過程とみた。この極端な表現は肉体や自然を恵みとみたマルキオンの異端やマニケイズム (マニ教) にみられる。中世では原罪以前の状態や原始教会を理想とする傾向が強まり,のちの宗教改革論争の一契機をなしている。原罪以後の人間は下降をたどっているとする人間蔑視の思想は,インノケンチウス3世において頂点に達した。中世キリスト教ではこの原始主義に反対しながらも文化的原始主義をとる流れもあり,その典型はフロリスのヨアキムにみられる。ルネサンス期には原始主義は低調であるが,D.エラスムス,M.モンテーニュは例外である。 18世紀ロマン派の中心思想も文化的原始主義であり,サド,J.-J.ルソー,ノバーリス,W.ワーズワスなどに顕著である。社会科学においても,文化人類学や S.フロイトの精神分析学に原始主義を見出しうる。 20世紀の文学,絵画,音楽にもその影響は少くない。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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