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厳復 げんぷくYan Fu

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

厳復
げんぷく
Yan Fu

[生]咸豊3(1853)
[没]1921
中国,清末の思想家翻訳家。福建省候官 (閩候県) の人。字は又陵。号は幾道。福州の船政学堂で航海術を修め,光緒3 (1877) 年イギリスに留学,ポーツマス海軍大学で学んだ。同5年帰国,李鴻章の招きを受け天津の北洋水師学堂の校長となり,以後同 26年まで在任。科挙出身でないために冷遇され,その不満もあり,また,日清戦争敗北後の危機感から,康有為らの維新派に共鳴,『原強』などの論文を発表した。やがて翻訳による啓蒙を志し,『天演論』 (T.H.ハクスリー『進化と倫理』) をはじめ,留学中に接した西洋近代思潮を次々に翻訳紹介し,清末の思想界に大きな影響を与えた。若い頃から桐城派の呉汝倫に学んだ古文の名手で,翻訳も格調高い古文でなされているが,古文に固執し,思想も漸進的改良主義から一歩も出なかったため,中華民国成立後はむしろ保守派に変り,北京大学学長就任後も,袁世凱の帝制運動を援助したり,孔子崇拝を唱えたり,また文学革命にも反対の立場をとって声望を落した。翻訳『原富』 (A.スミス『国富論』) ,『法意』 (C.モンテスキュー『法の精神』) ,『群己権界論』 (J.S.ミル『自由論』) など。

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デジタル大辞泉の解説

げん‐ふく【厳復】

[1853~1921]中国、清末の啓蒙思想家。侯官(福建省)の人。字(あざな)は又陵(ゆうりょう)、のち幾道(きどう)。英国に留学後、西洋思想を翻訳・紹介し、清末の知識人に大きな影響を与えたが、辛亥(しんがい)革命後は保守化して袁世凱(えんせいがい)の帝政運動にも加担。翻訳に「天演論」(ハクスリー「進化と倫理」)、「原富」(スミス「国富論」)など。イエン=フー。

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百科事典マイペディアの解説

厳復【げんぷく】

中国,清末の思想家。福建省の人。第1次英国留学生となる。帰国後,北洋水師学堂校長,京師大学堂翻訳局長を経て,1910年資成院議員。T.ハクスリー,A.スミス,モンテスキューなどの名訳により,清末思想界に大きな影響を与えたが,袁世凱の帝政運動に関係し,名声を落とす。

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世界大百科事典 第2版の解説

げんふく【厳復 Yán Fù】

1853‐1921
中国,清末から民国時代初の啓蒙思想家,翻訳家。字は又陵(ゆうりよう),号は幾道,晩年は瘉壄(ゆや)老人と号した。福建省侯官(閩侯(びんこう))県の人。1871年(同治10),福州船政学堂で航海術を学んで卒業,77年(光緒3),イギリスに留学,ポーツマス大学,グリニッジ海軍大学で海軍に必要な科学技術知識を習得した。しかし,このときから近代的軍事技術を支えている西欧の政治経済や哲学に強い関心を寄せていた。

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大辞林 第三版の解説

げんふく【厳復】

1853~1921) 中国、清末の啓蒙思想家・翻訳者。福建省出身。字は又陵ゆうりよう、号は幾道。イギリスに留学後、西洋思想を翻訳・紹介し、清末思想界に影響を与えた。主訳書「天演論」(ハクスリー「進化論と倫理学」)、「原富」(スミス「国富論」)。イエン=フー。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

厳復
げんふく / イエンフー
(1854―1921)

中国、清(しん)末の啓蒙(けいもう)思想家。字(あざな)は又陵(ゆうりょう)(幼陵)、幾道(きどう)、号は観我生室主人、瘉(ゆや)老人など。福建(ふっけん/フーチエン)省侯官((びんこう))の人。福州船政局海軍学堂を経てイギリスに留学するが、軍事の学習よりも西欧の思想や社会制度に関心をもち、帰国後は変法運動の高まりのなかで、1895年現状の批判と変革を求めた「原強」「辟韓(へきかん)」など4篇(へん)の政治論文を発表し、1898年には『天演論』(T・H・ハクスリー著『進化と倫理』による)を出版した。以後、スミス『国富論』、ミル『自由論』、モンテスキュー『法の精神』などを翻訳し、西欧近代思想の紹介に努めた。なかでも『天演論』による進化論の紹介は、清末中国の変革志向者たちに弱者劣者としての現状認識とそこからの脱出の道を模索する手掛りを与えたことで、その影響はきわめて大きい。しかし戊戌(ぼじゅつ)政変後はしだいに復古的色彩を強めていき、辛亥(しんがい)革命後の1916年には袁世凱(えんせいがい)の帝制運動に加担するまでに至った。[有田和夫]

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世界大百科事典内の厳復の言及

【籌安会】より

…中国の近代,袁世凱の帝政運動に奉仕する目的で,国体研究を名目に,1915年8月から10月にかけて組織された団体。発起者の楊度(1874‐1931),孫毓筠(そんいくいん),厳復,李燮和(りしようわ),胡瑛,劉師培を六君子と呼ぶこともある。中心人物の楊度は,留日学生出身の政客で,清末以来袁世凱の幕下にあった。…

【天演論】より

…イギリスの科学者T.H.ハクスリーの《進化と倫理Evolution and Ethics》(1894)を,清末の思想家厳復が文言の中国語に訳したもの。1896年(光緒22)に稿本が完成し,翌年日刊新聞《国聞報》に載り,98年単行出版された。…

【桐城派】より

…清末には文壇・政界の実力者曾国藩が出て,いっそう折衷学の傾向を強め,経書の文章も文学とみなし,政治・経済の2類を加え《経史百家雑鈔》を編集した。李鴻章もその弟子であり,厳復,林紓も欧米の思想・文学の紹介を桐城派古文の作者として行っている。【佐藤 一郎】。…

※「厳復」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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