反・返(読み)かえし

精選版 日本国語大辞典 「反・返」の意味・読み・例文・類語

かえし かへし【反・返】

〘名〙 (動詞「かえす(反)」の連用形の名詞化)
① 読みかけられた歌に対する返答の歌。返歌
※竹取(9C末‐10C初)「かの読給ひける歌の返し、箱にいれて返す」
② 手紙や話しかけに対する返事。
※枕(10C終)二五「『とく来(こ)』といひやりたるに、『今宵はえまゐるまじ』とて返しおこせたるは」
③ 風、雪、波などが、いったんおさまってからまた起こること。
蜻蛉(974頃)下「昼つかた、かへしうち吹きて、はるる顔の空はしたれど」
④ 自分に対してした他人の行ないに報いること。
(イ) 仕返しをすること。返報
源氏(1001‐14頃)常夏「御かへしや御かへしやと、筒(どう)をひねりて、とみに打ちいでず」
(ロ) 返礼すること。
日葡辞書(1603‐04)「Cayexiuo(カエシヲ) スル」
⑤ ひきかえして敵に向かうこと。
太平記(14C後)三「敵の大勢を見て、一返(ひとカヘシ)も返さず、捨鞭を打て引ける間」
⑥ すばやくひるがえすこと。押したものを引いたり、手首などをそれまでの動きとは逆に回転させたりすることにいう。「手首のかえし」「バットのかえし」
⑦ 神楽歌、催馬楽などで、呂(りょ)、律などの調子を変えてうたうこと。
※神楽歌(9C後)小前張・薦枕「〈又本返し〉誰が贄人(にへひと)ぞ 誰が贄人ぞ」
⑧ (「反」を訓読した語) 中国で、漢字音を示す反切(はんせつ)法のこと。他の漢字二字をあげ、上の字の頭子音と下の字の韻とを合わせて一音を示すもの。
壒嚢鈔(1445‐46)九「切と者、只反也。通訓をも、かえしとよむべし」
謡曲、その他各種の歌謡で、同じ文句を二度繰り返してうたうこと。また、その文句。
⑩ 同じ娼妓を、二度目に来て再び呼ぶこと。裏をかえすこと。
※浮世草子・新吉原常々草(1689)下「此かへしに近日罷出んとは思はず」
釣り針の内側にある突起あご
※歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)一「返(カヱ)初手の餝付を東西へ引分る」
⑬ 「かえしづめ(返爪)」の略。
随筆・独寝(1724頃)上「八段目は誰しも弾(ひく)事はなるまじ。むつかしき所のかへし有ゆへなり」
薫物(たきもの)沈香をたいて、香りがほとんどなくなった様子、または燃えつきたもの。たきがら。
※三条家薫物書(1523)「火の気いとどしくあがりて、かへしのかになるとあれば」
⑮ 聞香席で、一巡した香炉をもう一度まわすこと。
⑯ 鳥の糞(日葡辞書(1603‐04))。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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