化学辞典 第2版 「反応装置の最適化」の解説
反応装置の最適化
ハンノウソウチノサイテキカ
optimization of chemical plant
目的生成物が最小の経費で生産できるように,すなわち,安全性や操作性などの制約のもとで最大の利潤が得られるように反応プロセスを選択し,それに必要な装置を選定あるいは開発し,操作条件を決定することをいう.目的とする反応を進行させるのに必要な経費には,反応装置の設備費,運転費のみならず,それに付随した原料および生成物の精製ならびに分離操作の経費,熱源および熱交換の経費,計測制御のための設備費など多数の項目が含まれている.したがって,反応装置の最適化の問題は非常に複雑になるが,これに対する数学的な手法がいくつか開発されている.これらの手法では,まず数式として取り扱うために,利潤に影響を及ぼす各項目中に含まれていて任意に選べる量(ただし,上限あるいは下限が決まっていることも多い)を変数(設計変数)u1,u2,…,ui で表す.次に利潤をこれらの変数の関数(これを目的関数という)として表す.変数の数が多いほど,計算量が急激に増加するので,この段階で各変数が利潤に及ぼす影響の程度をそれぞれ調べ(感度解析という),影響が少ない場合にはその変数を定数で近似して変数の数を減らす.そして,これら変数間の関係や制約条件のもとで,適切な最適化手法によって利潤が最大となるように変数を決める.以上の過程においては,反応装置のある部分のみを取り上げて,その部分における目的生成物の収率,選択率,あるいは収量を最大にするという,より限定された目標に対して最適操作の問題を考えることも多い.これは各部分の特性をよく把握するために重要ではあるが,各部分の最適化で得られた変数 ui の値は,反応装置全体を最適化した場合に得られる ui の値とは一致しないことが多いので,注意しなければならない.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報