取置(読み)とりおく

精選版 日本国語大辞典 「取置」の意味・読み・例文・類語

とり‐お・く【取置】

〘他カ四〙
① 物などをしまっておく。とっておく。手もとにおく。
万葉(8C後)一一・二三五六「狛錦紐の片へぞ床に落ちにける 明日の夜し来なむと云はば取置(とりおき)て待たむ」
※堤中納言(11C中‐13C頃)貝あはせ「それかくさせ給へと言へば、塗り籠めたる所に、みなとりおきつれば」
② とりかたづけする。かたづける。始末をする。
落窪(10C後)一「帯刀、御ゆするの調度などとりおきて」
死骸をとりかたづける。葬る。埋葬する。
※羅葡日辞書(1595)「Pollinctura〈略〉シガイニ ユヲ アビセ toriuoqu(トリヲク) コトヲ ユウ」
浮世草子・本朝桜陰比事(1689)二「いそぎ死人を取をけと仰付させられ」
④ とって他におく。ひっこめる。やめる。
史記抄(1477)七「大に驚て先づ攻めごとをとりをいて、与呂将軍倶に東するぞ」

とり‐おき【取置】

〘名〙
① 取っておくこと。また、その物。
② とりかたづけること。始末すること。処置。処分。
言継卿記‐永祿一三年(1570)三月六日「早旦当番請取に参内〈略〉御取置以後退出」
③ 特に、死骸をとりかたづけること。葬ること。埋葬。
※浮世草子・本朝二十不孝(1686)三「人々是をにくみ、死がいの取置(トリヲキ)にも構はず」
④ 身の持ち方。やりくり。暮らし方。
※浮世草子・好色一代男(1682)一「鴨の長明が孔子くさき身のとり置(ヲキ)も、門前の童部にいつとなくたはれて」
とっておき。特別。
評判記難波の㒵は伊勢白粉(1683頃)二「禽獣の声をさとりて又男(ゆうなん)が取置(トリヲキ)つらがまへに移せし三十三じんの替りたるかづき物」

とって‐おき【取置】

〘名〙
① 貴重品などを大事にしまっておくこと。後日、いざというときの用意のために品物などをたくわえておくこと。ことのほか大切にしておくこと。また、そのもの。とっとき。
浄瑠璃・甲賀三郎窟物語(1735)四「若君の御大事と、取て置きの臍繰分別」
② (大事にして人前に出したがらない人の意) 秘蔵の人。愛人。おもいもの。愛妾。
※浮世草子・傾城色三味線(1701)鄙「あの奥の杉戸を引ひらいて、取(トッ)て置(ヲキ)の女躰の姿おがみたし」
③ 特に、大事にしまっておいてまれに着る着物。はれぎ。いっちょうら。
※浄瑠璃・心中刃は氷の朔日(1709)上「五十余りの女房の、とってをきをばぬらさじと」

とっとき【取置】

〘名〙 「とっておき(取置)」の変化した語。
※雑俳・田植笠(1723か)「とっときを着そろふ嫁の酒迎」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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