古越磁(読み)こえつじ

改訂新版 世界大百科事典 「古越磁」の意味・わかりやすい解説

古越磁 (こえつじ)

中国浙江省にひらかれた越州窯のうち,古い時期の製品をさし,具体的には後漢から盛唐にかかる1世紀から8世紀の間につくられた越磁である。後漢の窯は浙江省北部の海岸沿いに,寧波(ニンポー)市,上虞県に発見され,西晋時代になると窯は紹興市,鄞(ぎん)県,余姚(よよう)県,慈渓県,余杭県から江蘇省の宜興市にひろがり,飛躍的に窯が拡散していった。東晋時代には徳清県に徳清窯がきずかれるが,六朝後期に入ると作陶の停滞下降を反映するように,新窯の発見はない。古越磁は青磁と黒磁とからなり,大半は青磁で占められている。灰を溶媒剤とする青磁は灰釉にふくまれる鉄分が還元焼成されて酸化第二鉄(酸化鉄(Ⅲ))が酸化第一鉄(酸化鉄(Ⅱ))となり,美しい青磁釉が生まれる。初期の青磁はすでに紀元前7世紀につくられてはいるが,越州窯がひらかれて量産化され,本格的に青磁史が出発する。漢代までの青銅器時代にわかれをつげ,三国から西晋時代には堅牢焼物独特の形が越州窯でつくられ,古越磁の造形はまさしく革新的であった。神亭壺,天鶏壺はその典型例である。西晋を頂点にして,作風は弛緩しはじめ,その低迷は盛唐まで継続された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「古越磁」の意味・わかりやすい解説

古越磁
こえつじ

中国、六朝(りくちょう)時代から唐時代に越州窯で焼かれた磁器。内容は青磁と黒釉(こくゆう)磁からなる。この時期の越州窯は浙江(せっこう/チョーチヤン)省の北部一帯に窯(かま)が発見されており、徳山(とくざん)県の徳清窯(よう)、蕭山(しょうざん)県の石蓋村(せきがいそん)窯、上董(じょうとう)窯、余杭(よこう)県の余杭窯、上虞(じょうぐ)県の百官鎮窯、余姚(よよう)県の鰲唇山(ごうしんざん)窯、鄞(きん)県の小白市窯、紹興(しょうこう/シャオシン)市の下浦西窯、永嘉(えいか)県の永嘉窯、金華県の五朱堂窯、麗水県の呂歩坑(ろほこう)窯がおもなもので、ほかに江蘇(こうそ/チヤンスー)省宜興市に均山窯、福建(ふっけん/フーチエン)省福州(ふくしゅうフーチョウ)市に南台窯が報告されている。

 浙江省北部はすでに後漢(ごかん)時代に越州窯の初期の窯が開かれ、青磁は質を高め、黒釉磁が初めて焼造された。古越磁は三国時代以後はとくに貴族墓の明器(めいき)として重視され、西晋(せいしん)時代に古越磁は造形の頂点を築く。神亭壺(しんていこ)や天鶏壺はその主役であった。東晋時代は釉(うわぐすり)がよく溶けて美しくなるが、反面、造形には衰えがみえ始め、六朝後半の宋(そう)、梁(りょう)、斉(せい)、陳(ちん)朝から隋(ずい)になるとこの傾向はさらに助長され、初唐では古越磁の優品はほとんど認められていない。

[矢部良明]

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世界大百科事典(旧版)内の古越磁の言及

【陶磁器】より

…浙江省の上虞や慈渓,永嘉など後漢時代の寧波の磁器窯が発掘され,きめの細かい胎土に連続的なスタンプ文様を施し,均等に美しい透明釉がかかった壺や瓶,五連壺,唾壺(だこ),硯,洗などが出土している。窯の様式も竜窯の形態で,三国時代に発達する古越磁の先駆的な陶磁器が紀元前後に完成されたことの意味はきわめて重要である。 三国,両晋,南北朝の時代は華北と華南で独自の陶磁器生産形態を遂げる。…

※「古越磁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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