可愛い子には旅をさせよ(読み)カワイイコニハタビヲサセヨ

デジタル大辞泉 「可愛い子には旅をさせよ」の意味・読み・例文・類語

可愛かわいにはたびをさせよ

子供がかわいいなら、甘やかさないで、世の中のつらさを経験させたほうがよい。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 「可愛い子には旅をさせよ」の解説

可愛い子には旅をさせよ

子どもがかわいければ、甘やかさず世間に出して、さまざまな経験をさせることが大切だというたとえ。

[使用例] 可愛い子には旅をさせろという昔風の父の思いつきから、十六の年の春休みに私は持って生まれた憂鬱症をなおすために京阪地方へ旅行をさせられた[中勘助*銀の匙|1913~15]

[使用例] 小説を書くのに、一番大切なのは、生活をしたということである。実際、古語にも「可愛い子には旅をさせろ」というが、それと同じく、小説を書くには、若い時代の苦労が第一なのだ。金のある人などは、真に生活の苦労を知ることは出来ないかも知れないが、とにかく、若い人は、つぶさに人生の辛酸めることが大切である[菊池寛*小説家たらんとする青年に与う|1923]

[解説] 古いことわざで、戦国時代からほぼ同じ表現が使われてきました。近代以前の道中はひたすら歩くのが基本で、難所治安の悪いところもありましたから、「旅は憂いもの辛いもの」といわれたのも当然でしょう。現代レジャーとしての旅行とは大きな隔たりがあります。しかし、中世には「若いとき旅をせねば老いての物語がない」「若いときの苦労は買うてもせよ」ともいわれ、技能作法を身につけるために故郷を離れ、修業することも珍しくありませんでした。「旅」は、道中だけでなく、比喩的に生家を離れ、他人なかで経験を積むことを意味するようになります。
 ことわざは、主として比喩的に使われ、子どもがかわいかったら、甘やかさないで早く世間に出しなさいということになります。逆に、子どもかわいさでいつまでも親元においておくと、多くの場合、決してよい結果にならないのも経験的にたしかでしょう。

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