司法面接とは,法廷でも使用することのできる,精度の高い供述証拠を聴取することをめざした面接法の総称である。捜査面接investigative interviewともいわれ,実際上は録画面接video recorded interviewとして行なわれる。この面接法がとりわけ注目されるのは,被害者,目撃者となった子どもや知的障害者などが聴取対象となる場合である。
【子どもの証言】 子どもが目撃者,被害者となった事例では,その証言能力は認められながら,証言の信用性が否定される事例が少なくない。注意,記憶,コミュニケーションなど,子どもの認知能力の問題もあるが,周囲のおとなによる誘導や圧力,面接の繰り返しにより,記憶の変容が生じたり,供述が曖昧なものとなったり,変遷したりすることが,問題として指摘されている。1980年代にアメリカで起きたマクマーチン事件(幼稚園の職員が園児への性的虐待で起訴されたが,園児への誘導的な面接法に問題があるとされた)や,イギリスで起きたクリーブランド事件(保護者による児童への性的虐待が問題とされたが,児童への面接も含め,警察や福祉関係者の対応に問題があるとされた)などにより,幼児,児童へのより適切な事情聴取の検討が行なわれるようになった。イギリスではバトラー・スロスButler-Sloss裁判官を委員長とする調査委員会の勧告を受け,1992年にイギリス内務省・保健省が『子どもの司法面接:ビデオ録画面接ガイドラインMemorandum of good practice on video recorded interviews with child witnesses for criminal Proceedings』(MOGP)を刊行した。開発にはイギリスの犯罪心理学者であるデイビスDavies,G.M.やブルBull,R.が携わった。ガイゼルマンGeiselman,R.E.とフィッシャーFisher,R.による認知面接cognitive interviewの影響も大きい。
司法のシステムにいち早く取り入れられたのは,上記のMOGPである。MOGPは社会的弱者である子どもに関する特別措置として位置づけられ,被害者,目撃者が14歳未満(性的虐待の場合は17歳未満)の場合,様相面接phased approachとよばれる面接法を原則として1度だけ行ない,これを録画することを推奨している。録画は裁判官の裁量により,子どもへの主尋問の代わりに用いることができる。2002年には,MOGPを拡充した『捜査手続きにおける最良証拠の確保:子どもなどの傷つきやすく怯えている証人のためのガイダンスAchieving the Best Evidence in criminal proceedings: Guidance for vulnerable and intimidated witnesses,including children』(ABE)が刊行された。そこでは児童のみならず,一定の精神障害,知的障害,身体障害,発達障害,事件で怯えている人intimidated peopleにおいても,同様の手続きによる面接が可能とされている。
アメリカでは1990年代に,国立小児保健・人間発達研究所National Institute of Child Health and Human Development(NICHD)で,ラムLamb,E.らがNICHDプロトコルを開発した。このプロトコルはアメリカ国内や北欧,イスラエルなどで広く用いられ,とくにイスラエルでは,1990年代後半にハーシュコビツHershkowitz,I.が導入した後,国の標準的な手続きとして用いられるようになった。そこでは性的虐待の被害者や殺人の目撃者となった子ども,知的障害をもつ成人や未成年の被疑者に対し,NICHDプロトコルに基づく面接が行なわれている。このほか,カナダのステップワイズ面接stepwise interview,ドイツの構造面接structured interviewなどが有名である。