認知面接(読み)にんちめんせつ(英語表記)cognitive interview

最新 心理学事典の解説

にんちめんせつ
認知面接
cognitive interview

1980年代にガイゼルマンGeiselman,R.E.,フィッシャーFisher,R.により考案された面接法である。認知,記憶,コミュニケーション,社会的ダイナミクスなどに関する認知理論を背景とする,想起を促す種々の技法からなる。事件の解決には目撃者からの情報を得ることが重要だが,目撃者から十分な情報を得ることは難しい。多くの事件は偶発的であり,効果的な記銘は困難だからである。また,聴取までの時間経過により,記憶の減衰や変容が生じることもある。アメリカでは1970年代,目撃者の記憶を喚起するために催眠法が用いられたが,催眠は被暗示性を高めるという問題も指摘されていた。このような背景のもと,認知心理学的な知見を生かし,正確な情報をより多く聴取するために考案されたのが認知面接である。

【認知面接の歴史】 1984年に提案された初期の認知面接original cognitive interview(OCI)では,タルビングTulving,E.による符号化特定性原理encoding specificity hypothesis(想起手がかりの有効性は,想起時の手がかりと,記銘時の出来事との重なりの度合いに依存する)とバウワーBower,G.による記憶の多重符号化multicomponent view of memory(記憶は多重に符号化されており,複数のパスによりアクセスできる)に基づく四つの技法が提唱された。すなわち,前者を反映する技法として,①文脈復元(出来事の環境や文脈を心理的に復元する),②悉皆報告(不完全な,あるいは重要でないと思われることであってもすべて報告するよう促す),後者を反映する技法として,③順序変更(出来事の生起した順序だけでなく,最後の場面から逆の順序で報告する),④視点変更(自分からの視点ではなく,犯人からの視点で出来事を思い出す)がある。

 その後,1990年代を通し,さらなる認知的な理論背景のもとに,以下のような技法や工夫が考案された。たとえば,⑤認知容量の限界への配慮(認知容量の制約のため,面接者にとっては質問を考えながら応答を聞くこと,目撃者にとっては質問を聞きながら応答を考えることは困難である。よって質問を控え,録音を用いる),⑥被面接者に適合した質問の工夫(質問は,あらかじめ作られたリストに沿って機械的に行なうのではなく,被面接者が今まさに考えていることについて行なう),⑦集中(多重的に与えられた感覚のうち,特定の感覚に焦点を当てさせる。たとえば目を閉じさせ,視覚化させる)などである。また,社会的ダイナミクスという観点から,⑧統制権の移譲(情報をもっているのは被面接者であるから,被面接者に会話の統制権を渡す),⑨被面接者の積極的参加(情報をもっているのは被面接者であるから,被面接者こそが心的活動を積極的に行なえるようにする),⑩ラポール形成(個人的な体験を初対面の面接者に話すという困難を低減するため,意味のあるラポールを形成する)などが考案された。さらに,コミュニケーション理論の観点から,⑪会話の促進(コミュニケーションを強化し,通常の会話よりも詳しく話してもらうために「もっと話してください」と促す),⑫記憶のコードに沿った出力(たとえば,触覚などの非言語的なコードを用いる方が伝えやすい場合は,そのコードで再現する)などが加わった。このほか,自由報告を促すオープン質問やグラウンドルールの使用も推奨されている。こういった多くの技法のうち,コミュニケーションに関連するものを強化し,用いる技法の全体数を減らした面接法を強化認知面接enhanced cognitive interview(ECI),子どもにも用いやすいように限られた技法のみを使う面接を修正認知面接modified cognitive interview(MCI)という。

【手続きと成果】 認知面接の基本は,目撃者(被面接者)を,体験した出来事の記憶コードへと導き,コードが活性化されたならば,コミュニケーションを促し,情報を引き出すというものである。面接は五つの段階からなる。①導入ではラポールを形成し,詳しくたくさん話してもらう必要があることを伝え,被面接者に積極的な役割を取るように求める。②自由報告の段階では,最大限の自由報告(自由ナラティブ)を求める。被面接者に自分のことばでできる限り話してもらうことで,面接者は,被面接者がもっている表象(人物,事物,出来事の流れなど)を推定することができる。特定のイメージが喚起されれば,面接者はどの順序でどの技法を用いて思い出してもらうかの計画を立て,被面接者がもっている情報をすべて報告してもらう。たとえば,目を閉じて犯人のイメージを描いてもらい,それについて記述してもらう。③フォローアップの質問により,さらなる情報を得る。④振り返りでは,面接者は得られた情報を見直し,正確性についてチェックする。⑤クロージングでは,面接者は事務的な情報(年齢,住所など)を収集し,さらなる情報を思い出した場合の連絡先を伝える。

 認知面接については数多くの実証研究が行なわれており,1980年代以降の30年間で,認知面接に言及している研究は200件に上る。1999年に,コーンケンKoehnken,G.らは42の研究(うち29件は公刊されており,55の比較が含まれる)のメタ分析を行ない,警察などで従来行なわれてきた標準的な面接や,認知面接の技法は含まないが一般的に良いとされる面接法(構造面接)と比較して,認知面接では正確な情報がより多く引き出されること,ただし誤りもわずかながら増加すること,対象者の年齢による差はないこと,遅延が進むと認知面接の効果は小さくなることなどを示した。また,2010年にメモンMemon,A.らは57の公刊された研究(65の実験が含まれる)をメタ分析し,認知面接は他の面接法に比べ正確な情報がより多く得られること,とくに高齢者において有効であること,しかし誤情報もわずかだが増加することを示した。認知面接の有効性は頑健であり,アメリカ司法省の『目撃者ガイドラインEyewitness Evidence: A Guide for Law Enforcement』に含まれている。 →供述 →司法面接 →目撃証言
〔仲 真紀子〕

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