日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
国連持続可能な開発サミット
こくれんじぞくかのうなかいはつさみっと
United Nations Sustainable Development Summit 2015
ニューヨークの国連本部において2015年9月に開かれた、環境問題と持続可能な開発に関する国連主催の国際会議。193の国連加盟国の首脳や閣僚、国際機関や民間企業、研究機関、市民団体などが参加し、2016年から2030年にわたり、国際社会と各国政府によって共有される行動計画「私たちの世界を転換する:持続可能な開発のための2030アジェンダTransforming Our World : 2030 Agenda for Sustainable Development」が採択された。会議冒頭はローマ法王の声明に始まり、会期3日間にわたって各国首脳が発表した声明は、アジェンダの採択を歓迎し、実現に向けた具体策や気候変動対策などの重要性に関して言及する内容が目だつものであった。また、最終日には日本の首相安倍晋三(あべしんぞう)が声明を発表。そのなかでアジェンダ実現のための具体的な貢献策として、(1)持続可能かつ強靭(きょうじん)な質の高い成長の追求、(2)保健、教育支援分野の新政策を含む、脆弱(ぜいじゃく)な人々の保護と能力の強化、(3)持続可能な環境や社会の実現に向けた努力などについて発言した。
2030アジェンダは17の持続可能な開発目標Sustainable Development Goals(SDGs)と169項目のターゲットから構成されており、なかでも先進国を含むすべての国々に行動を求めている点が、大きな特徴になっている。SDGsは、2001年に策定されたミレニアム開発目標Millennium Development Goals(MDGs)の後継となる目標である。2012年6月にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」から活発な議論が始められた。SDGsでは「誰(だれ)も置き去りにしない(leaving no one left behind)」を理念として掲げ、国際社会が今後15年間で貧困を撲滅し、持続可能な開発を実現するための重要な指針を示している。また、MDGsからの貧困や飢餓、福祉や教育に関する問題を継続的な課題とする一方、新たな脅威として顕在化した環境や格差拡大の問題など、多くの国や国際機関が抱える課題を数多く取り上げた目標となっている。2030アジェンダでは、多くの課題について、特定された一部の課題に国際社会が取り組むより、むしろグローバルなパートナーシップのもとに、複数の課題について統合的に解決する仕組みや活動を促す内容となっている。
国連から発表された17のSDGsの要点は、以下のとおりである。(1)あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ。(2)飢餓に終止符を打ち、食料の安定確保や栄養状態を改善し、持続可能な農業を推進する。(3)あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する。(4)すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する。(5)ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児の能力を強化する。(6)すべての人々の水と衛生への利用可能性および持続可能な管理を確保する。(7)すべての人々に安価で信頼できる、持続可能な近代的エネルギーを利用可能にする。(8)すべての人々のための持続的かつ包摂的な経済成長、生産的な完全雇用と働きがいのある仕事を推進する。(9)強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化の推進、イノベーションの拡大を図る。(10)国内および国家間の不平等を是正する。(11)都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする。(12)持続可能な消費と生産の形態を確保する。(13)気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策をとる。(14)海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する。(15)陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止・回復、生物多様性損失を阻止する。(16)持続可能な開発に向け、平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する。(17)持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する。
[編集部 2018年6月19日]