国際海底機構(読み)コクサイカイテキコウ(英語表記)International Seabed Authority

デジタル大辞泉 「国際海底機構」の意味・読み・例文・類語

こくさい‐かいてきこう【国際海底機構】

アイ‐エス‐エー(ISA)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際海底機構」の意味・わかりやすい解説

国際海底機構
こくさいかいていきこう
International Seabed Authority

略称ISA。1982年の国連海洋法条約によって設立された国際機構で、深海底における活動を組織および管理するための機構。本部ジャマイカの首都キングストン。同条約の下で、深海底とその資源人類の共同財産であるとの原則に基づき、深海底制度が新しく樹立された。深海底の資源に関するすべての権利は人類全体に付与され、国際海底機構が人類全体の利益のために行動するものとされている。同条約のすべての締約国は機構の構成国となる。機構の主要機関としては総会理事会および事務局が設けられている。総会は、すべての構成国からなる最高機関とされ、機構の権能の範囲内の問題に関して一般的な政策を定める権限をもつ。理事会は、総会で選出される36の構成国からなる執行機関とされ、機構が遂行する個別の政策を定める権限をもつ。

 深海底資源の開発は機構の認可を得た締約国や企業が行うが、実際の大規模な開発が行われるまでの間、機構は主として、探査業務計画の申請の処理、すでに先行投資者として認められた国や企業に関する事務的処理、金属市場の分析を含む深海底活動の及ぼす影響についての検討、あるいは環境保護に関する規則を含む深海底活動の遂行に必要な規則の整備などの任務を遂行する。機構には、機構自らも直接開発に従事するための機関として事業体(エンタープライズ)が設置されることになっているが、事業体の初期の操業は締約国との合弁事業により行い、事業体が独立して運営を開始するまでは、事務局がその任務を遂行するものとされている。深海底資源の開発は健全な商業原則に従って行われ、ガットGATT。現、世界貿易機関WTO)およびその関連協定が深海底活動にも適用される。機構は、深海底開発により経済に深刻な悪影響を受ける開発途上国を援助するために、経済援助基金を設立しなければならない。なお、機構内には総会で選ばれる15名の委員で構成される財政委員会が設置され、同委員会において、機構の年次予算、機構の財政規則、構成国の財政上の義務、あるいは深海底活動から生じる経済的利益の衡平な配分に関する規則などについての審議が行われている。総会や理事会がこれらの事項に関する決定を行うにあたっては、財政委員会の勧告を考慮しなければならない。

[田中則夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「国際海底機構」の意味・わかりやすい解説

国際海底機構
こくさいかいていきこう
International Seabed Authority; ISA

1982年の国連海洋法条約によって深海海底開発の管理を目的に設立された国際機構。所在地はジャマイカ。主要機関は総会,理事会,事務局。各国の主権の及ばない国際海底区域を管轄し,その資源 (人類の共有財産) の探査と開発を規制するが,諸国の事業者と並びみずからも鉱物資源の採掘や販売を行う独自の操業機関エンタープライズをもつ点が特異である。これは,先進国側の主張するライセンス方式と,途上国側の主張する直接開発方式とで意見が対立したため,両者の折衷案であるパラレル方式が採用されたもので,国および私企業が開発を行う場合には,開発可能な2鉱区のうち1つをエンタープライズまたは途上国の開発用に残すというものである。

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世界大百科事典(旧版)内の国際海底機構の言及

【国際連合】より

…とくに深海海底制度は,技術の進歩にともない深海底の開発が可能になったことから,一部の先進国による独占的開発を排して,深海底の資源を人類全体の利益のために開発しようとするものである。そこで,深海底の区域と資源は〈人類の共同財産〉であって,資源開発の利益は,発展途上国の利益と必要をとくに考慮して国家間に衡平に分配されるものとし,このために国際海底機構を設けてこの区域での活動を規制し,開発は,国家や私企業とともにこの機構の一機関である公社(エンタープライズ)を通じて海底機構が直接に行うという画期的な制度となっている。新海洋法秩序の下で南北問題の解決をはかる動きとして,成行きが注目される。…

【深海底】より

…深海底は,また,すべての国による平和利用に開放される。 次に,制度面としては,深海底の資源を管理し,深海底における活動を組織するために,〈国際海底機構〉が設立される。機構の主要な機関は,総会,理事会,事務局である。…

※「国際海底機構」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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