国連の専門機関である「万国郵便連合(UPU)」が定めたUPU条約に基づき、加盟国間で手紙や荷物を配送できるサービス。国内では日本郵便が事業を担っており、最新の統計では国内からが約2千万通(2022年度)、海外からは約1億4千万通(19年度)だった。種類は手紙やはがきなどの「通常郵便」、30キロ以内の荷物を扱う「小包郵便」、最も短期間で配送できる「国際スピード郵便(EMS)」などがある。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
外国あてに差し出し、また外国から到達する郵便物、およびその取扱制度。かつては外国郵便とよんでいたが、1988年(昭和63)7月に国際郵便と改められた。
[小林正義]
国際郵便物は、通常郵便物、小包郵便物および国際エクスプレスメールExpress Mail Service(万国郵便連合の規定する業務で、EMS業務と略称される)郵便物に大別される。また、内国郵便と同様に普通扱いと特殊取扱いがあるが、そのほかに送達手段の違いによって、船便、航空便とそれを取り混ぜた取扱いのエコノミー航空郵便Surface Air Lifted(SAL便)がある。
通常郵便物には、書状、郵便葉書、印刷物、小形包装物および点字郵便物が含まれる。小形包装物は小さな小包といえるもので、重量も2キログラム以下である。
小包郵便物には以下の3種類がある。(1)連合小包 万国郵便連合の小包郵便物に関する約定に加入している諸国とのあいだに交換されるもの、(2)フィリピン小包 日本とフィリピン共和国との間の小包郵便物約定によるもの、(3)南ア小包 日本と南アフリカ共和国との間の小包郵便物約定によるものである。連合小包に対し、2国間の約定による(2)(3)の小包を特約小包と称している。
EMS業務は、万国郵便条約第6章第4部に定める特別取扱いで、通常郵便物、小包郵便物の対象となる通信文、書類または物品を航空便で最優先的に運送し、もっとも速いと認められる方法で配達し、かつその引受と配達について記録し、万一の場合に保障のある取扱いである。日本では1975年(昭和50)にイギリス、香港(ホンコン)、ブラジルとの間で取扱いを開始したが、2003年(平成15)3月現在は189か国・地域を対象としている。
国際電子郵便(INTELPOSTインテルポスト)は、郵便のネットワークとファクシミリ伝送を組み合せたもので、もっとも速い国際郵便であった。1984年に、香港、アメリカ、オーストラリア、イギリス、オランダ、西ドイツ(現ドイツ)、フランスの7か国と取扱いを開始し、2000年には42か国・地域に拡大したが、その後家庭へのファクシミリの普及や電子メールの浸透などで利用数が激減、2003年4月に廃止となった。
SAL便は差出国とあて地の国内は船便扱いであるが、差出国からあて地の国までは航空便扱いとするものである。このため料金が安く、「船便より速く、航空郵便より経済的である」といわれている。SAL便による取扱いは、小包、印刷物、小形包装物である。SAL小包の取扱いは、1985年7月、SAL印刷物は、87年10月に取扱いを開始し、2000年3月現在80か国・地域を対象としている。
[小林正義]
特殊取扱いには、書留、保険付、受取通知および速達がある。書留は、内国郵便と異なり、通常郵便物のみが対象で、小包が対象外である。保険付は、書状、連合小包が対象で、受取通知は、書留か保険付とする通常郵便物、連合小包が対象となっている。速達は、航空通常郵便物、連合小包が対象である。ただし、保険付、受取通知、速達については、一部取り扱わない国がある。
国際郵便は、発信国の切手によって料金を前納することになっている。このため相手から返信をもらう場合、経済的な負担を相手にかけないため、国際返信切手券の取扱いがある。この切手券は1枚150円である。これを書状に同封して送ると、相手国の郵便局において、その国から20グラムまでの書状を発送する場合の船便の料金の切手と交換してもらえる。航空便扱いの返信がほしい場合は、その料金に見合う切手券を送ればよい。船便による通常郵便物以外は、地帯別に料金が設定されている。ただし郵便葉書の場合は、航空が70円、船便が60円の世界均一料金であり、航空書簡(エログラム)も90円の世界均一料金となっている。
[小林正義]
国際郵便物を各国で円滑に取り扱うため、1874年(明治7)に万国郵便連合(UPU)が結成された。日本は、1871年に近代的な郵便制度を創業していたが、当時の取扱いは内国のみで、外国あての取扱いは自らの制度になかった。そのころの外国あての郵便は、当時日本に開設されていたアメリカ、イギリス、フランスの郵便局を経由する扱いをしていた。このため、1873年8月にアメリカと郵便交換条約を締結し、75年1月からアメリカ、そしてアメリカを通じて諸外国あての外国郵便(現在の国際郵便)の交換を開始した。日本が万国郵便連合に加盟したのは1877年(明治10)6月1日で、これにより79年12月にイギリスが、80年3月にフランスがそれぞれの在日郵便局を閉鎖した。外国あての小包郵便物の取扱いは、内国での創業(1892年)より早く、1880年1月に開始しており、外国あての航空郵便の取扱いも1924年(大正13)9月から、内国に先だって開始された。45年(昭和20)の第二次世界大戦敗戦により、日本の外国郵便業務はGHQ(連合国最高司令部)によって全面的に停止された。翌年9月に一部が解除され、50年に全面解除となった。これに伴い、集配を行う特定郵便局でも外国郵便を全面的に取り扱うことになった。再開された戦後の国際郵便の大きな特徴は、船便主体から航空郵便へと移行したことである。時代の要請である、スピードに対応した郵便サービスの充実が図られている。
[小林正義]
国際郵便物を国際間で円滑に交換するため、各種の条約が結ばれているが、日本が加入している主要な条約・協定は、次のとおりである。(1)万国郵便連合憲章および一般規則、(2)万国郵便条約および施行規則、(3)アジア太平洋条約(APPO)とその施行規則である。このほか、小包郵便物については、フィリピン共和国、南アフリカ共和国と約定を結んでいる。
[小林正義]
『山口修編『郵便博物館』(1987・ぎょうせい)』▽『郵政省郵務局郵便事業史編纂室編『郵便創業120年の歴史』(1991・ぎょうせい)』▽『国際通信文化協会編・刊『わかりやすい国際郵便の手引』(1996)』▽『国際通信文化協会編・刊『国際郵便料金早見表 1997年版』(1997)』▽『郵便サービス研究会著『図解 郵便局がまるごとわかる本――郵便サービス・郵便貯金・簡易保険』(1998・東洋経済新報社)』
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