日本大百科全書(ニッポニカ) 「ピストンエンジン」の意味・わかりやすい解説
ピストンエンジン
ぴすとんえんじん
piston engine
断面が円形で一端の閉じた円筒形のピストンがシリンダー内を往復し、それにシリンダー内の高圧ガスの圧力が作用して出力を得る構造のエンジン。蒸気機関やガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどがこの形式で、ガスタービンや蒸気タービン、ジェットエンジンなどの回転部分のみからなる回転型機関に対して、往復動機関(レシプロエンジン)と総称される。ピストンエンジンは、一般にはピストンの往復運動を回転運動に変換するクランク機構、カム機構などが必要で、回転型機関に比べて重量や振動の面で不利ではあるが、〔1〕高圧ガスの気密をピストン周囲の円形のピストンリングで保つために気密がよく、回転型機関より高圧のガスを用いることができる、〔2〕比較的容易にかつ安価に製造でき、取扱いも容易である、〔3〕小出力のものから大出力のものまで製造できる、などの利点があり、広く用いられている。
一般にはシリンダー部分が固定してクランク軸が回転するが、かつて航空機用としてクランク軸が固定し、シリンダー部分が回転する型式のものもあった。また、土木工事などで用いられる杭(くい)打ち機もクランク機構をもたないピストンエンジンである。円筒形のピストンのかわりに三角形の回転子と、偏心軸といわれるクランク機構をもつバンケルエンジンも一種のピストンエンジンである。
[吉田正武]